【5月9日AFP】ひげを生やしたヒップスターや眼鏡をかけた20代の若者が、ペールエールやダークスタウトをちびりちびり飲んでいる。店の名は「ガーデンビア」。最近めっきり舌が肥えている客たちにロシア産クラフトビールを提供するモスクワ(Moscow)のバーの一つだ。

 クラフトビール革命はすでに数年前に北米と西欧を席巻したが、ここへ来て、ウオッカをがぶ飲みしているという悪評を振り払いたいロシアでも、クラフトビールが流行り始めた。

 酒豪として有名なロシア人だが、まん延するアルコール依存症を抑制するために政府が規制を強化したことによって、近年では酒の消費量が減ってきている。保健省幹部によると、ロシア人の昨年の純アルコール消費量は、一人当たり平均11.5リットルだった。2014年の13.5リットルよりも減少している。

 ビール市場では、全体の消費量は減っている。しかし、ロシア人の飲酒の嗜好が洗練されていく中、大手メーカが苦戦する一方で、ニッチ生産者は繁盛し始めている。同国のアマチュアビール醸造家を対象にする雑誌「リアルブリュー(Real Brew)」の​​編集長ナタリア・ペトロバ(Natalia Petrova)氏は「モスクワではほぼ毎日、新しいクラフトビールバーが開店している」と説明する。また、ロシア全土で「すでに1000以上の地ビール醸造所がある」と言う。

 9月にオープンした「ガーデンビア」のオーナー、ヤン・ストピチェフ(Yan Stopichev)氏は毎月60以上のブランドのロシア産クラフトビール、4000リットルを提供していると言う。ウラル山脈(Urals)地方のエカテリンブルク(Yekaterinburg)で醸造されたビールを1パイント注ぎながら、同氏は自分が扱ういくつもの醸造所について「ユーチューブ(YouTube)の動画を見て、良質のビールを作る方法を学んだ若いロシア人たちが始めたんだ」と語る。