【5月9日 AFP】米軍の元兵士、ベティー・アン・アーチャー(Betty Ann Archer)さん(64)は、数十年にわたり抑うつ状態と闘った末、体の性を女性へと完全に移行するため、ついにニューデリー(New Delhi)へと渡った。ここインドでは、彼女のように安い費用で性別適合手術を受けるために入国する外国人が増えている。

「デール・アーチャー」として米アリゾナ(Arizona)州に生まれたアーチャーさんは、物心ついたころから間違った体の中にいるように感じていたという。少年だったころには内緒で母親のドレスを着てみたりしていた。保守的な軍人だった父親にとって、そんな息子の行動はおぞましいことだった。

「自殺を図ったことは2回ある。自分自身が好きじゃなかった。自分の体も全然好きじゃなかった。自分自身になれていなかった」。2011年に体調を崩し、死の恐怖を味わった。「それが治ったとき、結論に達した。死ぬか、(性別を)移行するかのどちらかだって」。今、アーチャーさんは手術を終え、自分のために買った明るい青のサリーとインド風のジュエリーを身に着けている。

 業界関係者によると、海外からインドを訪れるトランスジェンダー(性別越境者)は少ないものの、着実に増えているという。自国よりも手術代が安く、順番待ちもしなくてすむからだ。

 性別適合手術を目的とした海外旅行の行き先として一番に挙がるタイよりもインドを選ぶ人もいる。アーチャーさんもタイは「ちょっと高すぎる」と感じてインドにした。保守的なインドでは、「ヒジュラ」と呼ばれるトランスジェンダーの人々は昔から忌避されてきたが、それがアーチャーさんの選択を変えることはなかった。