■プラスとマイナス、2つの側面 

 今日、コムナルカに部屋を持つ家族の多くは自分たちではそこに住まず、学生や旅行者、移民労働者たちに貸し出している。

 南部ボルゴグラード(Volgograd)から4年前に越してきた住民でアーティストのアンナ・フョードロバさん(39)は、大きな窓から市内の大通りが見渡せる部屋を、フェスティバルで観光に訪れる人たちに公開した。部屋には今は使われていない暖炉があり、天井は3.5メートルと高い。

 だが、キッチンとバスルーム、トイレを他の7部屋に住む10人と共同で使わなければならない。古くてぼろぼろのバスルームとトイレは、長く暗い廊下の突き当たりにあり、廊下の裏側のキッチンは必ず誰かが使用している。しかもキッチンには4つのオーブンと、小テーブルと冷蔵庫が8組ある。1世帯ごとに置いているからだ。

「コムナルカにはプラスとマイナス、2つの側面がある」とフョードロバさん。1905年建造の市中心部のアパートに住むメリットはあるが、隣人たちとの付き合いが難しいことなど「もちろん複雑な問題もある」。

 そう言っているそばから、隣人のナデジダさん(40)がやって来て、観光客に部屋を公開したことに文句を言う。「言った通りじゃない、アンナ。私が床を掃除したばかりなのに、あなたのお客さんがもう汚してる」

 懐かしくてフェスティバルのツアーに参加したという姉妹がいた。姉のスベトラナさん(48)は「私たちはここと似たアパートで育った。6部屋に18人が住んでいた」と話した。「現実には、毎日の生活にムードなんてなかった。あの生活には決して戻りたくない」(c)AFP/Marina KORENEVA