■社会の権力層や政府に対抗するツール

 政治は常に、世界のアートにとって発想の源となってきた。

 ベルリンの壁(Berlin Wall)に描かれた旧ソ連のレオニード・ブレジネフ(Leonid Brezhnev)書記長と旧東ドイツの政治家エーリッヒ・ホーネッカー(Erich Honecker)議長の情熱的なキスシーンを描いた壁画は、なかでも最も象徴的なものの一つだ。

 米国では2008年、ストリートアーティストのシェパード・フェアリー(Shepard Fairey)さんが手掛けた青白赤の地に、当時大統領選の候補者だったバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の顔と「HOPE」の文字を刻んだポスターが同氏キャンペーンの顔となった。

 今回、フィラデルフィア(Philadelphia)やオースティン(Austin)、デンバー(Denver)などの各都市で見られるのは、米大統領選の民主党候補指名を争うバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員を支持する作品だ。

 その一方で、ライバルのヒラリー・クリントン元国務長官を取り上げたものには、あまり好意的なものは見られない。

 例えばロサンゼルスでは、「Hillary Stinks - Reeks of Scandal(ヒラリーはくさい。スキャンダルまみれ)」と印刷された車用脱臭剤をかたどったオブジェなどが売られている。

 アートに詳しい専門家は、「ストリートアートは一般的に、社会の権力層や政府に対抗するツールとなってきた」と述べ、クリントン氏が過去の政治家と同様、そうした支配層の一人とみられていることを指摘。人々は同氏自身やその選挙活動への信用を失っていると説明した。(c)AFP/SARA PUIG