【4月29日 AFP】パキスタン・カラチ(Karachi)郊外で27日、兄(20)が妹(16)を包丁で殺害する事件があった。逮捕された兄は、妹が携帯電話で誰かと話しているのを見てかっとなったと供述しており、家父長制の慣習が残るパキスタンで相次ぐ「名誉殺人」とみられる。

 警察によると、ハヤート・カーン(Hayat Khan)容疑者はカラチの貧困地区オランギ(Orangi)にある自宅で、妹のスマイラさんを襲撃。負傷したスマイラさんを家の外に放り出したとされる。

 自宅前の階段に倒れ込んだスマイラさんを集まった近隣住民らが病院に運んだが、病院に到着する前に死亡したという。当時の様子をとらえた携帯電話の動画には、痛みにもだえ苦しむスマイラさんの周りに集まった人々が病院に運ぼうと呼び掛ける間、じっとカメラを見つめるハヤート容疑者の姿が映っている。

 保守色の濃いパキスタンの一部地域では、女性が携帯電話を使い、特に親族でない男性と通話することをタブー視する慣習がある。

 AFPは28日、警察署に拘留中のハヤート容疑者に話を聞くことができた。「妹が自宅の玄関で、誰かと(携帯電話で)話していた。相手は誰だと聞いたら『関係ないでしょう、誰と話そうと私の自由だ』などと楯突いた」と、ハヤート容疑者は説明。「ナイフでちょっと脅してやろうと思ったんだ。だが、致命傷を負わせてしまった」「もちろん、すごく悲しい出来事だ。僕も死にたい」などと語った。

 この事件では、地元警察がハヤート容疑者を告発するというパキスタンでは異例の措置が取られた。警察の説明によると、被害者の親族が容疑者を許すことで殺人罪を免れる「法の抜け穴」を阻止するためだという。

 兄妹の父親イナーヤトさんは事件後、地元メディアの取材に「起きてしまったことは仕方がない」と述べて息子を許すと話していた。

 パキスタンでは一家の「名誉」を守るとの理由で毎年、多数の女性が親族に殺害されている。(c)AFP