【4月29日 AFP】内戦が続くシリア北部アレッポ(Aleppo)の反体制派支配地域で27日、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が支援する病院が空爆を受け、少なくとも20人が死亡した。犠牲者には市内唯一の小児科医と子ども3人が含まれている。これを受けて米国と国連(UN)は28日、空爆を強く非難する声明を発表した。

 ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官は今回の空爆に関し「激しい怒り」を表明。「周知の医療施設を狙った意図的な攻撃」とみられると述べ、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領を支援するロシアに対し政権側を自制させるよう強く求めた。潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)国連事務総長も市民を狙った攻撃は人道法違反であり「弁解の余地はない」と空爆を非難した。

 有志市民による救助隊「ホワイト・ヘルメット(White Helmets)」はAFPに、27日の空爆で病院と隣接する集合住宅が破壊され計30人が死亡したと語っている。

 国連関係者らもシリア情勢の「壊滅的な悪化」に懸念を示し、欧米諸国などに2月27日の停戦合意を崩壊の危機から救う努力を呼び掛けた。

 英国に拠点を置く非政府組織(NGO)「シリア人権監視団( Syrian Observatory for Human Rights)」によると、空爆のあった27日、アレッポでは反体制派と政府軍の戦闘で市民53人が死亡。既に衝突での犠牲者が200人を超えた過去1週間でも1日における最多の死者数だという。

 そうした中でも政府軍はアレッポの反体制派掌握地域への攻撃準備を進めている。

 アレッポで続く戦闘によって、シリア他地域での停戦履行も危ぶまれる上、スイス・ジュネーブ(Geneva)で現在休会中にある国連仲介の和平協議も成果が疑問視され、スタファン・デミストゥラ(Staffan de Mistura)国連特使は苦労の末に締結にこぎつけた2月の停戦合意はいまや「虫の息」にあり、いつ崩壊してもおかしくないと警告した。(c)AFP/Karam al-Masri、Rim Haddad