【4月13日 AFP】人間が一夫一婦制となり、大半の動物にとって自然な行為である、より多くの配偶関係を持つ「乱婚」を拒絶するようになった理由は何なのだろうか。道徳か、宗教か、それともおそらく愛だったのか──。

 12日に発表された研究論文によると、その答えは細菌だという。研究は、人間の祖先は、性感染症が引き起こした大混乱によって、同じ相手と一生添い遂げる方が賢明との結論に至ったとしている。

 カナダ人とドイツ人の研究チームは、先史時代の狩猟採集民が農耕を行うために定住するようになった後、集団で暮らす人々の中で性感染症が発生して広まった事態を考察した。

 野放し状態のままでは、性感染症はまん延し、個人の生殖能力と集団全体の繁殖率に悪影響を及ぼす恐れがある。そして、人口の減少により、性行動の見直しを余儀なくされ、その結果として社会的な道徳観が形成されることが考えられる。

 研究では、狩猟採集民の人口動態と、その集団の中で広まった可能性が高い性感染症についての数理モデルが用いられた。

 研究チームは、「規模が拡大した居住集団での性感染症による問題増大が、人間の配偶行動に社会的な強制による一夫一婦婚の出現にどのように影響したか」を示すためにこの数理モデルを使用した。

 研究によると、30人程度の小集団では、性感染症の流行が拡大する見込みはなく、大抵の場合、流行期間は短くなるという。

 流行リスクの低さは、初期人類と現生人類の両方で、小集団において一夫多妻制(男性が2人以上のパートナーを持つ)が多くみられる理由の説明となるかもしれない。

■「進化の謎」

 研究チームによると、社会的に強制された一夫一婦制を人間が取っていることは長年にわたり「進化の謎」と考えられていたという。

「多くのより大規模な人間社会が、一夫多妻制から、農耕と大規模な居住集団の出現を発端とする、社会的に強制された一夫一婦制に移行した」と論文は指摘する。

 この謎は、今回の研究で解明されるかもしれない。

 研究論文を執筆したカナダ・ウォータールー大学(University of Waterloo)のクリス・バウフ(Chris Bauch)氏はAFPの取材に、病気のまん延などの要因を内在する、人間を取り巻く自然環境が「社会規範と、特に人間の集団主義的な判断力の発達に強い影響を及ぼす可能性がある」ことが、今回の研究で明らかになったと語った。

「だが、性感染症の問題が解決したとしても、将来的に結婚の形態が姿を消す、一夫多妻制が復活する、などと憶測するのは時期尚早だ」とバウフ氏は付け加えている。

 今回の研究は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表された。(c)AFP/Mariëtte Le Roux