■日本の技術

 丹治基浩(Motohiro Tanji)や大江健(Ken Oe)といった若いニットウエアデザイナーにとって、日本以外で生産するというオプションは存在しない。

 先週の「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO)」で自身のブランド「Motohiro Tanji(モトヒロ タンジ)」の新作を披露した丹治。ショーの後に応じたAFPのインタビューでは、国内の業者と仕事をすることを好むとし、「自分のデザインは複雑で、高いレベルの技術を要するが、これらの技術は日本にある」と話した。事実、丹治は、国内の工場に依頼し、立体的で洗練されたニットを世に送り出している。

 一方、大江がブランド「コーヘン(Coohem)」を立ち上げたのは、1990年代の不況を機に衰退する一方だった祖父の繊維会社、米富(Yonetomi)を救いたいという気持ちからだった。「コーヘン」というブランド名は異なる素材を組み合わせて編むことを意味する「交編」という専門用語に由来する。

 大江が同社に入ったのは6年前。そして、デジタルツールを取り入れたハイエンドのツイードスーツがコーヘンの強みとして広く知られるようになり、今や米ニューヨーク(New York)のジェフリー(Jeffrey)や香港(Hong Kong)のハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)といった国外大手百貨店でも取り扱われるようになった。

 技術とテクノロジーを強化した成果は、すでに数字となって表れている。国産ニットウエアの輸出量は、2006年からの10年間で4割増となった。他の繊維・アパレル輸出が振るわない中、業界唯一の光明となっている。