【3月23日 AFP】短時間で編み上がるプレタポルテのニットから、インクジェットプリンターを活用して自由にカスタマイズできるドレスまで──日本のアパレル業界は、人件費削減と安定した発展を目指し、最新鋭の技術を積極的に導入している。

 コンピューター横編機を主軸とする総合メカトロニクス企業、島精機(Shima Seiki)の工場では、衣服があっという間に出来上がる。ソフトウエアで制御された機械を使い、縫い目のないセーターのサンプルが30分とかからずに完成するのだ。

 同社が特許を取得している「ホールガーメント(WholeGarment)」システムでは、パターンや色、フィット感を自社開発のデザインソフトウエアを使って思い通りに指定することができる。同システムは、イタリアの高級ブランド「マックスマーラ(Max Mara)」をはじめとする数多くの企業が採用している。

 もともと手袋の編み機を製造していた同社は、1990年代に技術を一新。低迷していたアパレル製造業界を活性化する狙いがあった。

 同社の岩本健二(Kenji Iwamoto)氏は当時について、「この頃はちょうどバブルがはじけて日本の製造業の勢いが下がっている時で、当時『世界の工場』と呼ばれた中国にどんどん流れて行ってしまった時代だった。それを食い止めたかった」と語る。

 ホールガーメントシステムでは、従業員1人で機械10台を操作することができるため、人件費を抑えることが可能になる。さらに裁断・縫製という工程がないことから無駄が出ず、使用する素材の量も少なくて済む。

 開発直後の1年目は、日本とイタリアの約10社が同システムを採用した。出だしこそゆっくりだったが、今日では約800社が島精機のシステムを導入している。半数近くは日本企業だ。現在、編み機の世界市場占有率の6割は、同社が占めているという。

 システム開発の裏には、同社の技術的なノウハウを最大限活用し、低価格で他ではまねできない服を作りたいという日本のニットウエア業界からの要望もあった。