■計画は「前倒し」されたのか?

 ベルギー連続テロの実行グループは、アブデスラム容疑者が今月18日に身柄拘束されたことを受けて素早く攻撃を仕掛けたのか、という点では専門家の意見は分かれている。

 英ロンドン(London)を拠点とするIHSジェーンズ・テロリズム&インサージェンシー・センター(IHS Jane's Terrorism and Insurgency Centre)のマシュー・ヘンマン(Matthew Henman)所長は次のように語る。

「この種の攻撃には通常、偵察、爆発物の用意、連携・調整など、準備にかなりの時間がかかる。おそらく今回の一連の攻撃は以前から準備されていたもので、計画はかなり最終段階にあったものが、アブデスラム容疑者の逮捕で実行が前倒しされたという可能性の方が高いだろう」

 ベルギーのディディエ・レインデルス(Didier Reynders)外相は20日、アブデスラム容疑者は逮捕される前に、ブリュッセルを標的とした攻撃を計画していたと明らかにした。ベルギーでの捜査によって大量の武器が発見され、「新たなネットワーク」が作られていたことも分かった。ノルウェー国防研究機構(Norwegian Defence Research Establishment)のトーマス・ヘグハンマー(Thomas Hegghammer)氏は、「48時間でこのような攻撃を仕掛けられる人はいない」と言う。

■直前に犯行決めた可能性も

 一方、前述の仏対テロ当局幹部は「(22日の事件の)準備に数週間かかるとは必ずしも言えない」と言う。「爆発物、カラシニコフ銃、人員がすでにそろっているならば、『お前たちは空港へ行け、俺たちは地下鉄をやる』という具合にすぐに実行できる。2~3分で決められる」

 ヘグハンマー氏は、国際的で大規模な警察の取り締まりをかいくぐって生き延びるイスラム過激派のネットワークの能力は「かつてないほど」高まっていると指摘し、「(当局は)ネットワークを把握したが、それを根絶することはできなかった。これは重大な分岐点だ。ベルギー、ひいては欧州全体の対テロ能力が、存在する脅威に対して弱すぎることが露呈された」と警鐘を鳴らした。

(c)AFP/Eric Randolph and Michel Moutot