【3月18日 AFP】ルーマニア政府は17日、同国の高名な彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brancusi)の作品を購入するため、国民に対して募金を呼び掛けた。

 ルーマニア系フランス人のブランクーシが手掛けた作品の中でも、最高傑作の一つと考えられている「Wisdom of the Earth」をめぐっては、域内最貧国の一つであるルーマニア政府が、所有者に1100万ユーロ(約13億8700万円)を支払うことで合意している。しかし国庫からの支出は、わずか500万ユーロ(約6億3000万円)にすぎない。

 現在、国宝となっている同作品は、かつての共産主義政権によって一度没収されている。そして、その後は、所有権をめぐる裁判が長きにわたり続けられた。

 ルーマニアのブラド・アレクサンドレスク(Vlad Alexandrescu)文化相は記者会見で、同国政府は残りの金額を一般市民からの募金でまかなう方針で、ルーマニア国民や民間企業などに対する呼び掛けを行っていると述べた。

 石灰岩の作品は、両腕を組んで膝を立てて座り、謎めいた眼差しで遠くを見つめる女性の像。現在は、首都ブカレスト(Bucharest)のコトロチェニ国立博物館(Cotroceni National Museum)で展示されている。

 ルーマニア政府は、国宝と考えられる作品を優先的に購入する権利を有している。ブランクーシの作品を所有者らから買い取るため長期にわたる交渉を続けてきた。当初所有者らが要求していた金額は2000万ユーロ(約25億円)だった。

 生涯の大半を過ごした仏パリ(Paris)で1957年に死去したブランクーシ。同作品は、1911年にルーマニアの美術愛好家の友人の手に渡ったが、国外の美術展に出品するとの理由の下、1957年に時の共産主義政権によって没収された。

 1989年の独裁政権崩壊後は、その所有権をめぐり長期にわたり裁判で争われたが、2010年に作品は元の持ち主の子孫らに返された。返却から4年後、作品売却の意向が明らかにされた。(c)AFP