【3月18日 AFP】無数のフラッシュに包まれ、きらびやかに開催されている「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO)」の陰で、横堀良男(Yoshio Yokobor)氏(37)はいくつもの役割を一人でこなす──。スカウト、文化背景まで考慮した通訳、取引の仲介と、横堀氏が手掛けているのは、外国のバイヤーが日本の入り組んだデザイン業界に切り込み、今最も熱い若手ブランドに接触するための橋渡しとなるファッションコンサルティングの仕事だ。

 東京のストリートファッションは、トレンドを探し求める世界中の人々にとってインスピレーションの宝庫となり得る。だが、日本のデザイナーらは近年、三宅一生(Issey Miyake)や山本耀司(Yohji Yamamoto)といった強い影響力を持つデザイナーらの輝かしい足跡をたどって世界に打って出ることがなかなかできずにいる。

 日本のブランドは、品質や技術、クリエーティブなデザインという点で、これまで通り一目置かれてはいるものの、その名声を世界市場でのセールスに直結できていないケースも数多い。これこそ、業界に精通した横堀氏が痛感している問題だ。

 東京ファッションウィークのイベントの合間にAFPの取材に応じた横堀氏は、「例えばシンガポールのショップオーナーが、日本のデザイナーに発注したいと思っていたとする。でも、それは難しい」と指摘する。

 デザイナーらはあまり英語を得意としておらず、そのために請求書の送付や迅速な返答が難しくなっている。海外のマーケットに関する知識は豊富とはいえず、そしてそれが重要である理由も認識していない──横堀氏は、背景にある事情をそのように説明した。

 確かに、かつて国内市場が活況を呈していた時代は、世界進出を志す理由も乏しかった。しかし慢性的な出生率低下に伴い消費が落ち込む今、ファッション業界は潜在顧客を求めて海外に目を向け始めている。

 景気低迷を受け、東京都や日本貿易振興機構(ジェトロ、JETRO)がスポンサーとなり、仏パリ(Paris)の「コレット(Colette)」 や独ベルリン(Berlin)の「アンドレアス・ムルクディス(Andreas Murkudis)」といった有名セレクトショップのバイヤーらを誘致する動きも出てきている。