■秘密のルール?

 横堀氏は、交渉の仲介はもとより、デザイナーらがきちんと請求書を作成して海外のショップオーナーからの電子メールに素早く返信するようアレンジするといった細かい作業まで、万事を一手に引き受けている。6か国を股に掛け、過酷スケジュールをやり繰りしていることは、昨年1年間の飛行機の搭乗回数が117回だったということからもわかる。

 同氏が起業したのは10年前。当時は日本のブランドの国内流通に携わっていたが、後にビジネスチャンスはどこか別の場所、つまりファッションやブランド商品を渇望する消費者がいる外国にあると思い至った。今は中国やシンガポール、インドネシアをはじめとするアジア各国のショップと取引がある。

 一方、ベテランファッションコンサルタントでジャーナリストの久保雅裕(Masahiro Kubo)氏は、日本のブランドをパリに売り込むため、ポップアップストアの出店やファッションニュースサイト「ジュルナル・クボッチ(Journal Cubocci)」の運営を行っている。

 両氏はいずれも、クライアントの詳細は明かしていない。守秘義務があるのは当然ながら、若手ブランドの発掘ビジネスにおいては、何事も秘密裏に進めておく方が独自性・差別化の実現につながるからだ。

「まだ人に知られていないブランドをピックアップする」という久保氏は、小さなブランドを育成していく「インキュベート」の作業が、自分の仕事の一番楽しい部分だと話す。

 今では「DISCOVERED(ディスカバード)」や「divka(ディウカ)」といった日本のブランドが米やアジアの大手ブティックで取り扱われるようになった。「divka」は横堀氏が以前関わったブランドだ。これは業界に変化が生まれていることを示している一方で、舞台裏で活躍するコンサルタントの努力が実を結んでいる証しでもある。

 10代の頃は、最新の流行に敏感なショップでTシャツを購入するためアルバイトの掛け持ちまでしていたというファッションハンターの横堀氏。「海外のクライアント向けの事業を始めた最初の年、取引先は1店だけだった。それを思うと今は大きく増えようとしている」──その言葉の通り、彼のビジネスは今、軌道に乗りつつある。

 そして、「日本のファッションデザイナーは外に出て行くべきなのに、そこまでしなくてもと思っている人が多い。まずそこから変えていく必要がある」とこの国の現状を指摘した。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY