■実物大のレプリカ

 ISは、偶像崇拝とみなす古代の神殿や彫像を徹底的に破壊してきたことに加え、古代遺物の密売に関与している疑いもある。

 シリア国内の遺跡や宝物に関する史上最大規模の3次元記録データを蓄積する「シリアの文化遺産」データベースの構築作業は、昨年12月に開始され、ダマスカスにある多数のオスマン帝国時代の建造物群や、同都市にそびえ立つ11世紀に建造された城塞などを対象として進められている。

 DGAMのマムーン・アブドルカリム(Mamoun Abdulkarim)局長は「わが国の劇的な状況」を考えると、この作業が「人類にとって掛け替えのないものを失うことを回避する」ために不可欠だと指摘した。

 同局長は、声明で「この対策は、たとえどんなことが起ころうとも、国内の考古学的遺跡に復興への現実的な希望を与えるとともに、遺跡の記憶が失われないようにすることができる」と述べている。

 フランスの高等師範学校(ENS)や国立情報学自動制御研究所(INRIA)の支援を受けて実施されているこの活動は、戦火にさらされる危険に直面している遺跡をカタログ化するための多数の試みの一つだ。

 また、英オックスフォード大学(University of Oxford)、米ハーバード大学(Harvard University)、ドバイ(Dubai)未来のミュージアム(Museum of the Future)などが創設したデジタル考古学研究所(Institute for Digital Archaeology)は、シリアと隣国イラクにある、攻撃を受ける危険性が高い多くの遺跡の記録データを収集している。

 同研究所は、危機に直面している遺跡の画像を100万枚集めることを目標に、安価な3Dカメラ5000台を考古学者らや非政府組織(NGO)職員らに配布した。

 この「100万枚の画像データベース(Million Images Database)」は、年末までに全データがオンラインで公開される見込みだ。また、このデータベースを利用して、パルミラの破壊された凱旋(がいせん)門(Arch of Triumph)の実物大レプリカをつくり、4月に米ニューヨーク(New York)のタイムズスクエア(Times Square)と英ロンドン(London)のトラファルガー広場(Trafalgar Square)で展示する予定だ。

 昨年10月にISによって爆破された凱旋門のレプリカは、世界最大の3Dプリンターを用いてつくられる。(c)AFP/Laurence BENHAMOU