【3月5日 AFP】東北大学(Tohoku University)の大野和則(Kazunori Ohno)准教授らのチームが災害現場での要救助者捜索用に開発した機器を装着した「サイバー救助犬」が、年内の試験運用を目指している。

 先月、埼玉県富士見市で行われた訓練には、10歳のブリタニー・スパニエルの「ゴンタ」がサイバー救助犬として参加。全地球測位システム(GPS)やカメラなどの計測機器を搭載したバックパック型の装置を背負ってコンクリートのがれきの中を探索し、位置情報や映像をタブレット端末にリアルタイムで送信した。

 大野准教授によると、救助犬ががれきの奥に入った後は中の様子がわからないことが、これまでの問題点だった。だが、サイバー救助犬に取り付けられた装置からハンドラーのタブレットに送信される情報で、崩壊した建物の中の様子や生存者の位置などを知ることができるという。

 装置の重量は1.3キロ。ゴンタのような中型犬が背負っても負担にならない重さだ。米国では軍用犬用に似た装置があるが、救助作業では小回りのきく中型犬のほうが望ましい。

 ゴンタは2011年3月の東日本大震災の際にも救助活動に加わった。だが当時は、ゴンタも他の救助犬も嗅覚のみに頼って生存者を捜した。救助犬によるこれまでの捜索活動での大きな問題点は、ハンドラーから離れて犬が倒壊した建物に入るので中で何が起きているのか、外の人に分からなかったことだという。

 一方で大野氏は救助ロボットも開発した。ロボットは過酷な状況下でも長時間の捜索が可能だが、限られた時間内に広い範囲で要救助者を捜せる犬の能力には及ばなかった。災害発生時の人命救助では、それを過ぎると生存率が極端に下がるといわれる72時間以内の救助が重要な目安だ。

 ロボットに何ができて何ができないのか分かった、救助犬とロボットを組み合わせた新しい技術を開発できるのではないかと思ったと大野氏は話す。

 大野氏は、サイバー救助犬用のバックパック型装置の開発に協力した日本救助犬協会(Japan Rescue Dog Association)に年内にも装置を貸し出したいと考えている。(c)AFP/Natsuko FUKUE