【3月4日 AFP】(更新)巨大なパブリックアート作品で知られる英国の著名彫刻家アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)氏が「史上最も黒い」とされる顔料の独占使用権を購入したことが分かり、ほかのアーティストから怒りの声が上がるなど国内で物議を醸している。

 カプーア氏が独占使用権を得たのは、光の99.96%を吸収する「ベンタブラック(Vantablack)」と呼ばれる顔料。もともとは軍や宇宙航空分野向けに開発された物質だ。

 これに対し、作品でベンタブラックを使う計画だったポートレート作家のクリスチャン・ファー(Christian Furr)氏は、英大衆紙メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)に「(ベンタブラックは)私たちも使えるのが当然だ。一人に属する権利ではなない」と怒りをあらわにした。

 英紙ガーディアン(Guardian)もこの問題を取り上げたが、カプーア氏の色彩の好みからいって漆黒の顔料を試すアーティストとしては同氏がうってつけだと締めくくった。

 製造元のサリー・ナノシステムズ(Surrey NanoSystems)はウェブサイトで、カプーア氏のスタジオに独占使用権を認めたのはアート分野に限られ、その他の分野には拡大されないと説明している。

 一部のアーティストが反発していることについて同社に尋ねたところ、「アート界の議論であり、当社は関わりたくない。われわれはあくまで科学者だからだ」と回答した。(c)AFP