【3月8日 AFP】黒人サッカー選手が欧州で一流の監督になる道は「険しい」――しかし、元ナイジェリア代表ストライカー、ダニエル・アモカチ(Daniel Amokachi)氏の場合は、「氷のように冷たく硬い」のかもしれない。同国代表でアシスタントコーチを務めたアモカチ氏は、将来のキャリアを築くために「犠牲」を払い、現在はフィンランドでセミプロチームを率いている。

 いてつくような寒さの1月下旬、アモカチ氏はフィンランド2部リーグのJSエルクレス(JS Hercules)で指揮を執るため、北極圏から車でちょうど2時間の距離にあるオウル(Oulu)市に到着した。『雄牛(the Bull)』の愛称で知られた43歳のアモカチ氏は、母国とオウル市の気温差について、「気温35~38度の国から飛行機に乗り、到着した時はマイナス32度だったと記憶しています」と語った。

 フィンランド北部にあるオウル市は現在、屋外グラウンドが雪に覆われているため、アモカチ氏は暖房設備のあるドームで選手数人とトレーニングを行い、残りの選手はアルバイトだ。アモカチ氏の率いる新チームは、フィンランド2部リーグに昇格したばかりで、すべてがアマチュアなのだ。

 オウル市の環境は、かつてのスター選手が経験してきたものとかけ離れているが、アモカチ氏は1年契約をやり遂げるつもりでいる。「この仕事で最も大切なことは挑戦だ。アフリカ人だからこそ挑戦するんだ。なぜだか分かりますか?私たちアフリカ人は、欧州で監督の仕事を任せてもらえることがとても難しい」

 アフリカ、カリブ、南米出身の黒人選手は、欧州のピッチ上で輝きを放つ。しかし、ピッチを離れると活躍の場は限られており、フィンランドで監督業を引き受けたアモカチ氏は、数少ない黒人指揮官の一人だ。

 フィンランド1部リーグでは、ロバニエミ(Rovaniemi)に本拠地を置くロバニエメン・パロセウラ(RoPS)で2009年にジンバブエ出身の指揮官が誕生したが、アフリカ人監督はこれが最初で最後となっており、黒人監督が欧州でまれな存在なのは、人種差別が原因だと疑われている。