【2月28日 AFP】ドイツ・ブンデスリーガ1部で「アメリカン・ドリーム」ならぬ「ジャーマン・ドリーム」を体現している若者がいる。ボルシア・ドルトムント (Borussia Dortmund)でユースチームから引き上げられ、先発に抜てきされるまでになった米国U-17代表のクリスティアン・プリシッチ (Christian Pulisic)だ。

 17歳のプリシッチは現在、電光石火のスピードでチーム内の序列を駆け上がっている。

 2015年1月にドルトムントに加入したプリシッチは、U-17のチームでドイツ王者になると、すぐさまU-19へ昇格。そして今冬の中断期間中にトップチームの練習に招待され、トーマス・トゥヘル(Thomas Tuchel)監督に強烈な印象を与えたことで、躍進を果たした。

 中断明け2試合目となる1月30日のFCインゴルシュタット(FC Ingolstadt 04)戦では、後半23分にリーグ戦初出場。17歳と133日でのブンデスリーガ1部デビューは、ドイツで8番目の若さだった。

 そして3度の途中出場を経て、今月21日のバイヤー・レバークーゼン(Bayer Leverkusen)戦ではついに左ウィングとして先発デビューを果たした。前半の45分間をプレーしたあと、プリシッチに代わって途中出場したのはドイツ代表のマルコ・ ロイス(Marco Reus)だった。

 本拠地ジグナル・イドゥナ・パルク(Signal Iduna Park)に17位ホッフェンハイム(1899 Hoffenheim)を迎える28日の試合では、ロイスが先発出場し、プリシッチはベンチスタートが濃厚とされている。しかし、プリシッチ本人はドイツ有数の強豪チームで経験を積めるだけでもうれしく思っている。

 レバークーゼン戦で先発起用されたことについて、プリシッチは「これだけの人たちと、毎日一緒に練習できるだけでも信じられない経験です。それが、ピッチに立ってファンの前でプレーまでできたんですから、あの瞬間は夢のようでした」と語った。

「先発だって言われたときは最高の気分でした。とても誇らしかったです。しかも、この年齢ですからね」

「素晴らしい経験でした。試合前はかなり冷静だったんですが、キックオフ直前にはもちろん緊張しました。ただ、それ以前にわずかながらも(交代で)プレーしていましたから、準備はできていました」

 トゥヘル監督は、「彼を近くで見られてうれしいよ。笑顔がかわいくて、初々しいんだ。シャイな性格のようだが、あらゆる面で戦える選手だ」と話す。

 U-15、U-17と米国のアンダー世代の代表に選出されてきたペンシルベニア(Pennsylvania)州出身の若者は、6月にコパ・アメリカ・センテナリオ(Copa America Centenario USA 2016)に臨む米国代表のユルゲン・クリンスマン(Jurgen Klinsmann)監督のレーダーにもすでにとらえられている。

 元ドイツ代表の点取り屋でもあるクリンスマン監督は、若手をためらわず起用する指揮官として知られており、プリシッチの飛躍に胸を躍らせながら、今後もこの才能あふれる若者を注視し続けたいと話す。

「とてつもない才能に恵まれた選手だ。その点に疑いはない。ただ、今はとにかくチェックを続けたい。ドルトムントでプレー時間を積んでいくのを見て、とてもワクワクしている。われわれは目の前のことに一日一日取り組んでいくだけだ」

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