■栄養失調の治療法開発に期待

 研究チームは次の段階で、他の子どもの母集団を用いて今回の結果を検証した上で、腸内細菌を栄養失調の治療に活用できる方法を探求する必要がある。

 マウス実験では、単に2つのグループを同じエリアに入れるだけで、健康な細菌が一方のマウスから他方に受け渡される助けとなり、正常な発育が回復することを、研究チームは発見した。

 同じくサイエンス誌に発表された、仏リヨン大学(University of Lyon)のマーティン・シュワルツァー(Martin Schwarzer)氏率いる2件目の研究では、栄養不良の若いマウスで成長ホルモンの働きを促進させる特異的な細菌株1組を同定した。

 成長ホルモンの機構が栄養不良で阻害されると、発育不全を引き起こす恐れがあるが、「ルミノコッカス・グナバス(Ruminococcus gnavus)」と「クロストリジウム・シンビオサム(Clostridium symbiosum)」の2種の細菌は単独で、ホルモン機構を正常な状態に戻す働きがある。

「特定の細菌株を用いた微生物の治療介入と、栄養療法との併用は、慢性低栄養が人間の出生後の成長に及ぼす悪影響を緩和させるための、今までにない相補的な戦略となる可能性を秘めていると考えられる」と論文は述べている。(c)AFP