【2月16日 AFP】かつて右肩上がりだった日本経済再生への賭けは、株式市場の大幅下落や円の急騰により窮地に追い込まれ、安倍晋三(Shinzo Abe)首相の描いた成長戦略は正念場を迎えている。

 世界市場の乱高下は、安倍首相が2012年末の第2次安倍内閣の発足当初から推し進めてきた経済財政政策「アベノミクス(Abenomics)」の成果を帳消しにしようとしている。

 コンサルタント会社テネオ(Teneo)の政治リスクアナリスト、トバイアス・ハリス(Tobias Harris)氏は、日本が差し迫った金融危機に直面しているとか、安倍政権が崩壊する可能性があるとかいうリスクがあるわけではなく、単に、政府の経済政策が目標を達成できていないだけだが、これによって日本は、安倍首相が政権の座に就く前と同様に、人口減少の影響に対応することなどできない状況が続くだろうと述べた。

 大規模な政府支出や中央銀行による金融緩和、高度に規制された経済の改革などの安倍首相の政策は、当初は成果をもたらすかに見えた。

 急速に進んだ円安で輸出産業の利益は上がり、株式市場は大幅に上昇。安倍首相の「日本を取り戻す」という主張を支えた。しかし、経済が持続的に成長しているという実感には乏しく、安倍首相の経済改革は中途半端だと広く批判されている。

■「政策立案者らは責めを負う必要がある」

 ジャパンマクロアドバイザーズ(Japan Macro Advisors)の大久保琢史(Takuji Okubo)氏は、政策立案者らは大筋で失敗しており経済成長が持続する強い日本をつくる助けになっておらず、その責めを負う必要があると述べた。

 コンサルタント会社テネオのハリス氏は「日本銀行(BOJ)の(マイナス金利政策)決定に対する否定的な反応は、安倍首相が政権の座に就いた2012年12月以来の成果を脅かしている」と指摘。「円高が中国の成長鈍化やそれが新興国市場に与える影響、他の先進国における需要の低迷といった外的要因によって引き起こされている限り、安倍政権や日銀がどんな追加政策を取ろうとも、その効果はせいぜい限定的なものにとどまるだろう」と述べた。

 政府は、個人消費を刺激して日銀が掲げる2%という野心的なインフレ目標達成につなげようと、勤労者の賃上げを求めている。しかし企業側は慎重な姿勢を取っており、政府の呼びかけに応じる動きはほとんどない。縮小しつつある経済は支出に対する政府の期待に致命的な打撃を与える可能性がある。「企業はすでに利益予測を下方修正し始めている。円高のなかでこの傾向は続く可能性がある」とハリス氏は警告する。

 安倍首相は、来年の消費税増税を予定通り実施するかどうか決めなければならない。この増税は、日本の財政再建に不可欠とみられている一方で個人消費を妨げる可能性もあることから、アベノミクスに対する懸念は高まっている。(c)AFP/Hiroshi HIYAMA