【2月12日 AFP】ほとんど何も隠さないゴールドのビキニ姿でお尻を振るダンサーたちに囲まれて、リオ(Rio de Janeiro)のカーニバルを楽しんでいるときに、「規律」とプリントされたTシャツを着ている男性には気づかないだろう。規律とは、問題山積のブラジルに似合わない言葉かもしれない。

 だが豪勢な山車や色っぽいダンサーたちが脚光を浴びる陰で、その地味なTシャツを着たパウロ・ロベルトさん(50)たちが、カーニバルが効率的に進行するよう支えている。

 ロベルトさんはエリート・サンバスクール「サウゲイロ(Salgueiro)」の一員だ。同スクールはパフォーマーたちの出番の時間を管理したり、いつどこへ行けばいいかを指示する役目を果たしている。

「私たちはガイドのようなものだ」と、ロベルトさんは言う。

 サウゲイロのキャストは3500人で、多くがコミカルな衣装を着ている。山車はバビロンの空中庭園から宮殿まで6つもあり、会場の観客は7万人。ロベルトさんは休む暇なく働いている。

 サンバスクールは、自前の衣装を着た何千人もの素人を、ミュージカルやオペラのようなエンターテインメントに仕上げるという意味で、奇跡的な組織だ。

 ブラジルでは珍しく、このパレードに限ってはチームの演技が時間どおりに始まり、規定の1時間20分できっかり終わる。その準備は半年も前から始まる。リハーサル、資金集め、大道具のデザイン、作曲、衣装作り、山車制作など、やることはいっぱいある。

 パレードが始まると、審査員の厳しい審査が始まる。サンバの世界ではすべてそうだが、審査にも厳しい基準が設けられており、少なくとも10のカテゴリーで点数がつけられる。

 各セクションの間隔が空きすぎるのは許されない。さらにドラマーがリズムを外せばもう終わりだ。昔から、計算を間違えたために山車が大きすぎて会場に入らないという問題も起きている。

「ヴィラ・イザベウ(Vila Isabel)」団の山車ディレクターの1人であるレオナルド・サルドウさんは、準備を万全にすることがカギだと語る。通常、準備は半年から1年かかり、その間、少なくとも週に1回は集まる。

「私たちのスクールには5000人近くがかかわっている。一番重要なのは、みんなが同じ目標をもって、誰も勝手な行動をとらないことだ」と、サルドウさんは言う。「パレードは自発的なものだが、すべてがそうではない。それではうまくいかない」

 ヴィラ・イザベウのコーディネーターに、カーニバルの時期にブラジル人が力を発揮する秘訣は何かと聞くと、ただ「生まれつきさ」という答えが返ってきた。

「ブラジルには多くの問題があるのに、私たちがこれだけは成功させることができるのは信じがたいかもしれない。でもこれが私たちの伝統なんだ」

(c)AFP/Sebastian Smith