【2月4日 AFP】韓国の首都ソウル(Seoul)のIT企業で営業をしているキム・ジンサンさん(40)が、2人の幼い息子のために育児休暇を申請したとき、会社の上層部の反応はショックから不信感、怒りまでさまざまだった。「本気なのかと、何百回も聞かれた」とキムさんは言う。

 友人たちの反応も同様だった。なぜ「主婦の仕事」をするために自分のキャリアを中断するのかと、信じられない様子だった。だがキムさんの気持ちは決まっていた。会社側との何か月にも及んだ交渉の末、ついに1年間の育児休暇を認められた。同社創業から15年で初めてのケースだった。「とても大変なプロセスだったが、最後には認められて良かった」と、キムさんは玩具が散らかったソウルのアパートの居間で語った。

■補助金制度で政府が奨励

 韓国ではキムさんのようにキャリアを中断して子育てを選ぶ父親が増えている。子育ては女性の仕事とみなされてきた家父長的な韓国社会では、少し前なら考えられなかった現象だ。だが出生率の低下や女性のキャリア志向などを背景に、政府はもっと子供を産みやすい社会をつくろうと改革に乗り出している。

 政府の大規模なキャンペーンには、財界の抵抗にもかかわらず、男性の育児休暇を奨励するための補助金制度も含まれる。育児休暇によって会社から給料がもらえなくなるキムさんのような父親には、政府から100万ウォン(約9万8000円)を上限に月給の40%が支給される。法律では男性も女性も最長1年間の出産・育児休暇が認められている。

 育児も含めて、韓国の男性が1日のうちに家事に費やす時間は平均45分。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低だ。朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領は先月、出生率低下に関する専門家会議で「私たちの考え方は、稼ぎ手が男性だけだった昔のままだ」と述べた。韓国政府は、キャリアを中断して育児休暇を取る父親たちを「勇敢」だと奨励している。