南北離散家族問題、消えゆく民間ネットワーク
このニュースをシェア
■他界する離散家族ら
韓国政府はシムさんの組織など民間の支援団体を正式に認め、これらの団体に15年前から補助金を出している。韓国統一省によると補助金は継続的に増額されてきており、今後も支援を続ける方針だという。北朝鮮に暮らす親族と連絡を取り再会の段取りを整えるための補助金もあり、その金額は現在1家族当たり700万ウォン(約70万円)だという。
非公式の再会の大半は、北朝鮮との国境に近い中国領内の安全な家屋で行われる。シムさんによれば、「数日間屋内で身を寄せ合い、寝食を共にする」という。
一方政府による公式の再会事業では、3日間の日程で対面できるのは12時間と厳しい制限が設けられており、多くの場合、北朝鮮側の監視下で、公共の施設を使って行われる。
シムさんは、2000年の南北首脳会談後に本格化した公式の離散家族再会は「政治的パフォーマンス」の要素が強くなり、高齢となった離散家族の感情に対する配慮はうかがえないと指摘している。
しかしリスクや頻度、経費面で変化があったのは、民間組織による再会も同じだ。いわゆる「太陽政策」が取られていた2000年の南北首脳会談後の時期には毎年数百件の再会が実現したが、08年に南北関係が悪化し始めると数十件に減少した。11年に金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記が北朝鮮の最高指導者になり、中国との国境地帯で警備を強化するようになると、非公式の再会件数は年間10件を下回るようになった。
とはいえ、再会件数の落ち込みに最も大きく影響しているのは恐らく、依頼主が減っているという事実にある。「兄弟姉妹のいる高齢者はどんどん他界していく」とシムさん。「悲しいことだが、あと10年もすれば離散家族という問題自体、おおかた消滅するだろう」(c)AFP/Lim Chang-Won