極薄の圧力センサーを開発、乳がん触診の一助に 日米研究
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【1月26日 AFP】(写真追加)極薄で曲げることが可能な圧力センサーを日米の科学者チームが開発した。乳房のしこりを検出し、検診のデジタル記録を作成できる医療用手袋といった応用が考えられるという。研究報告が25日、発表された。
英科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)」オンライン版に掲載された研究論文によると、このナノ繊維でできたセンサーの厚みは3.4マイクロメートルで、食品用ラップの厚みの半分にも満たないという。
研究チームは、論文公表前に発表された声明で「将来的には、医療従事者らが、腫瘍を検出するための圧力感受性を持つゴム手袋を用いて、乳がんの身体的スクリーニング検査を実施できる可能性がある」と述べている。
東京大学(University of Tokyo)の染谷隆夫(Takao Someya)教授と米ハーバード大学(Harvard University)のジーガン・スオ(Zhigang Suo)教授が率いた研究チームによると、4.8センチ四方のシート状のセンサーには、圧力測定点が144か所配置されているという。
シートは非常に柔軟性が高いため、布のようにねじれていても圧力変化を正確に検出できる。研究チームは、こうしたセンサーの開発は世界初としている。
染谷教授は25日、AFPの取材に「熟練した医師の敏感な指先は、小さな腫瘍を発見できる可能性があるが、そのような感覚による感知は、測定不可能」と語った。
だが、感覚をデジタル化することは、他の医師との「感覚の共有」を意味すると染谷教授は指摘。つまり、検査を実行した医師と同じ感覚を他の医師が経験することが理論上可能になるというのだ。
「この新たなセンサーは、触診による所見を遠隔地からでも共有できるように、人間の感覚の測定を可能にすると思われる」と染谷教授は話し、今後、患者の体に直接触れて診察する触診と同等の医療を、患者と異なる場所にいる医師も提供できるようになる可能性があると説明した。
この極薄のセンサーにより、将来的には、熟達した医師しか感知できないような特定の感覚を記録して「触れられる」ようにすることも可能になると同教授は語っている。(c)AFP