■温暖化で農業が豊かに

 その一方で、氷床の融解がもたらす利点もある。氷で削られてできる「岩粉」はミネラルが豊富で、肥沃な土地に恵まれない国々で農業に役立てることが可能だ。グリーンランドの人々にとっては厄介でしかない岩粉だが、アフリカや南米に輸出すれば岩粉の養分が不毛な土地を豊かな農地に変えてくれる。

 さらに温暖化はグリーンランドの農業にも恩恵をもたらす。グリーンランド南部では夏季の気温が上がったことでジャガイモの生産量が増え、将来的には輸出を見込んだ生産規模の拡大がのぞめそうだ。

 ほかにも温暖な気候はグリーンランドの土壌にも有益となっていることが、微生物学者の研究で明らかになった。

 世界のジャガイモ農家は収穫がすべて台無しになりかねない有害微生物の脅威に直面しているが、コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)で微生物学を専門とするピーター・ストーガード(Peter Stougaard)准教授によれば、グリーンランド南部の土壌にはこうした有害な菌の成長を抑制する微生物が含まれているという。

 この微生物は、分子から化合物を生成したり代替農薬に用いたりできる可能性があり、バイオ技術として高い潜在力を秘めているとストーガード准教授は指摘する。(c)AFP/Mads Nyvold