■遺伝子の交換

 スラウェシ島の石器を作った人類種が、150万年以上前に近隣のジャワ(Java)島に住んでいたホモ・エレクタスから派生したのかについては、証拠となる化石がなければ知ることはできない。

 だが、今回の発見によって、現在のオーストラリアとなる地域に居住した最初の人類と関係している可能性も浮上した。このことについて、ファン・デン・ベルフ氏は「非常に興味深い」と指摘しながら、「オーストラリアへ最初にやってきたグループとその子孫のDNAのごく一部は、デニソワ人(Denisovans)と呼ばれる謎の人類種から受け継がれたものであることが、遺伝学的証拠によって明らかになっている」と付け加えた。

 現生人類とネアンデルタール(Neanderthal)人の両方の系統と関連があるデニソワ人は、約60万年前に現生人類から分岐し、約40万年前にネアンデルタール人から分岐したと考えられており、少なくとも4万年前まで生存していた。

 その化石は、ロシアのシベリア(Siberia)の洞穴で発掘された数本の歯と小指の骨1個しか見つかってないため、どのような姿をしていたのか、科学者らにもまだ分かっていない。

 だが、DNAがオーストラリアの先住民と関連していることは、一部のデニソワ人がアジア大陸の奥深くまで進出していたことを強く示唆している。

 ファン・デン・ベルフ氏は「現代のオーストラリア人の祖先とデニソワ人の遺伝子の交換が起きたのは、東南アジアのどこかである可能性が高い」と説明し、「最近、年代が特定されたスラウェシ島の石器を作ったのが、デニソワ人だった可能性は十分にあると言えるだろう」と述べた。

 残念なことに、熱帯気候では、DNAは極寒のシベリアほど良好な状態で残らないため、遺伝子的な手掛かりが見つかる可能性は低い。

 ただ、今回の石器群を作ったのがホモ・サピエンスでないことは確かだと、論文では指摘された。「ホモ・サピエンスのものにしては、年代が古すぎる」とファン・デン・ベルフ氏はその理由を説明した。

 鋭い刃を持つ片刃・両刃の石器は、石灰石のかけらから剥片を削り落として作られたものだという。(c)AFP/Marlowe HOOD