北朝鮮の「水爆実験」に無力な中国、その根底にひそむ思惑
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■北朝鮮を「緩衝材」に…中国が恐れるもの
北朝鮮による水爆実験成功の発表を受け、中国外務省は核実験に断固反対するとの声明を出し、国営メディアも一斉に北朝鮮批判を展開した。しかし、いずれも中国政府の具体的な今後の対応には踏み込まなかった。
どのみち、北朝鮮政府が中国の働き掛けを受け入れる可能性は低い。「金正恩氏は、失うものなど何もないと感じているのではないか」と、北京大学(Peking University)国際関係学院の王棟(Wang Dong)准教授は述べ、もしそうだとすれば、国際社会は「非常に難しい状況に置かれる」と指摘する。
「失うものはないと思っている人間に、どんな対応ができるだろうか?」
北朝鮮は2006年、09年、13年に核実験を実施し、国連(UN)から制裁を受けた。だが、行動を変えさせるには対話しかないと訴える中国は、北朝鮮の主要貿易相手国の立場を維持している。中国税関総署(GACC)によれば、15年1月~11月の精製油の対朝輸出は14年の年間輸出量を上回る17万6000トン以上で、穀物輸出量も2300万トン超となった。
こうした全ての根底には、北朝鮮を「緩衝材」として保っておきたいという中国政府の思惑がある。もし南北が統一すれば、中国国境付近に米軍が駐留すると予想されるからだ。
「中国は、エネルギーの提供や食料支援、対話窓口の維持を通じて金正恩体制の存続を助け、外交・経済上の孤立を回避させている」。独立系シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」の謝艶梅(Yanmei Xie)上級アナリストはこう述べ、次のように分析した。
「中国政府にとってみれば、核武装した北朝鮮は目障りで、憂慮すべき存在だ。だが、北朝鮮の体制が崩壊すれば、隣国で大混乱が起き、朝鮮半島が統一される可能性も出てくる。ひいては米国の影響力が中国の玄関口まで迫ることになり、(中国は)何よりそれを恐れている」 (c)AFP/Ben Dooley