【1月7日 AFP】米西部オレゴン(Oregon)州で発生した、武装した市民らによる野生生物保護区の占拠は、5日目となった6日も続いている。この事件は、地方部の市民らが国有地の奪還を目指す動きが高まっている米国で、数十年にわたり続いてきた土地所有権をめぐる議論を反映している。

 オレゴン州での立てこもりは、国有地に放火した罪で農場主2人が投獄されたことがきっかけだったが、専門家らは、土地所有権をめぐる議論の核心はさらに根深く、西部の各州で政府の管轄下にある牧草地や森林をめぐる権利や、鉱山での採掘許可なども関係していると指摘する。

 米コーネル大学(Cornell University)のジェラルド・トレス(Gerald Torres)教授(法律学)は、「われわれが直面している問題は、その土地を所有したことなど一度もないのに、それを自分のもののように扱う人々にどう対処するかということだ」と説明。こうした人々は「所有権ではなく使用権を与えられているだけ。連邦政府の管理担当者らを、まるで大君主、または、土地を実際に耕さない人々であるかのようにとらえている」と指摘した。

 政府の資料によれば、米国の国有地は西部に集中しており、西部13州の土地の半分余りが国の管理下にある。さらに連邦政府がここ数十年、環境規制を守るために鉱業や放牧、農場経営の権利の制限を強めてきたことも、地元民のさらなる反感を買っている。

■「無政府状態だ」

 オレゴン州の町バーンズ(Burns)近郊で先週末、野生生物保護区の占拠を始めたのは、農家や農場主、サバイバリスト(大惨事に生き残るために食糧や武器を備蓄する「生き残り主義」の信奉者)たちの緩いつながりによる集団だ。

 国有地に放火した罪で収監された農場主2人を支持することが目的とされているが、当の農場主2人は、多くの地元民と同様に、「憲法上の自由のための市民(Citizens for Constitutional Freedom)」と名乗るこの武装集団とは距離を置いている。

 バーンズのレン・ボーズ(Len Vohs)元町長は米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に「無政府状態だ」「ここでは、『力は正義なり』という古臭い考え方がまかり通っている」と語った。

 だが、ボーズ氏をはじめとする人々は、オレゴンの武装市民らが用いる戦略には賛同できないとしている一方で、彼らの行動は、国民の運命に対する政府の行き過ぎた管理との見方が多い問題への不満の高まりを反映していると認めている。

 トレス教授は、1970~80年代に起きた「よもぎの反乱(Sagebrush Rebellion)」と呼ばれる運動を例に挙げている。この運動は、連邦政府による土地の管理をめぐる大改革を要求したもので、故ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元大統領の支持も得ていた。

 トレス教授は「農業と牧場経営業が圧迫されると、放牧料の値上げや、放牧料の徴収そのものも攻撃として受け止められる」「さらに、絶滅危惧種保護のための放牧の制限や、灌漑の制限が、これに重なる」と指摘している。(c)AFP