■「最終幕」

 セイヨウオオマルハナバチの場合、典型的なコロニーでは、そのライフサイクルは1年足らずで、女王バチ1匹と働きバチ150匹で構成されるまでに成長する。

 だが、ある時点で何かが崩れ、時計仕掛けのように正確な連携活動は終幕を迎える。そして、この「競争段階」への移行は迅速に、時に荒々しく進む。

 ロトラー・ヘルマン氏は、AFPの取材に「これは、セイヨウオオマルハナバチのコロニー全体で短期間に発生する全面的な行動変化だ」と語る。

 ハチたちは突如として動揺し始め、互いに攻撃し合いながら動き回る。さらには卵を狙って、各部屋を引き裂き開くこともあり、また攻撃性が非常に高まるため、女王バチの死につながる恐れすらあるという。

 女王バチが存在することで、働きバチがみな強制的に不妊になっていることが、これまでの実験で判明していた。だがコロニーが成熟するにつれ、女王バチ以外のハチも産卵を強行するようになる。しかし、この「反逆行為」による卵は受精卵ではないため、単一系列の染色体を持つ雄バチしか生まれない。

 一方、コロニーを構築する女王バチは、事前に雄バチとの交尾を済ませており、その際に精子を体内に蓄えることができるため、雌と雄の両方の子孫を産むことができる。

 これまでの研究では、社会秩序を暴力的破滅に導く要因として、コロニーの大きさが指摘されていた。

 だが今回の最新研究では、一連の詳細な実験を通じて、ハチの巣に含まれるろう分の化学成分のわずかな変化が、攻撃性を爆発させる引き金になっていることが明らかになった。

「終わりの段階」にあるコロニーから採取した蜜ろうにさらされると、新たに形成された巣の働きバチが「生殖を行うための競争を開始する」ことが、研究のために行われた実験で確認できた。

 さらに、繁殖力のある活動的な女王バチが巣の中に登場した場合でさえも、同様の結果が得られたため、蜜ろうが女王バチの影響力をしのぐことも分かった。(c)AFP/Marlowe HOOD