【1月17日 AFP】ガラガラと音の鳴るアンクレットを素足の足首に着け、カラフルなビーズの儀式用のスカートをはいた白人の少年は、ドラムのリズムに合わせて激しいダンスを踊る──。金髪の少年、カイル・トッド君(12)は、「サンゴマ」と呼ばれる南アフリカの伝統的な祈祷(きとう)師。昔から黒人の仕事とされてきた「伝統医療」の道へ進んだ数少ない白人の若者だ。

 それは前兆となる夢から始まった。両親は当初、真剣に受け止めず、息子はただテレビの見すぎなのだろうと思っていた。「最初、幻が見えた。ただの夢か悪夢だと思っていたんだ」──トッド君は、サンゴマになるための訓練を受けた首都プレトリア(Pretoria)近郊の黒人居住区で語った。

 カイル君が最も鮮明に覚えている夢の一つは、アパルトヘイトの闘士、ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領の死を予見した夢。「マンデラ氏が亡くなる数週間前に、僕には彼が死ぬのが見えた。周りの人たちには、そんなのは夢だ、テレビを見ていて悪夢を見たのだと言われた……それが、現実になった」と振り返った。マンデラ氏は2013年12月に95歳で他界した。

 南アフリカで登録されているサンゴマは6万9000人ほど。近年は白人のサンゴマも少数ながら登録されているが、カイル君ほど若い白人は珍しい。

 サンゴマは南アフリカ社会で尊敬される存在だ。とりわけ黒人の間では、サンゴマに対して恐れと畏敬が入り交じった感情が抱かれている。サンゴマは体や心を治療するだけでなく、霊媒師の役割も果たす。

 家にいる時のカイル君は、他の10代の子どもらと何ら変わらない。テレビの前で何時間も過ごし、ビデオゲームやサッカーをして友達と遊ぶ。しかし最近では週末になると、ゲーム機のコントローラーをビーズのついたノブケリー(一端がこぶ状になっている木のつえ)に持ち替え、アシのマットに座って「患者」の治療にあたっている。さいころやコイン、動物の骨などを羊の皮のマットの上に投げて「占いを読む」──つまり診断を下しているのだ。