■用意された300の墓

 リビア赤新月社によると正確な数字はないが、数百人の男性と女性、子どもが「無名の人々の墓地」──そう地元住民が呼ぶ場所──に埋葬されている。

 墓地の一角にはさらに300の墓が用意されている。海で命を落とし、イスラム教のしきたりにのっとって葬儀が行われる難民のためだ。

 ここで穴掘りの作業にあたっている1人の男性は、少し前に120人を乗せた船が沈没した際には、墓の準備に2日間かかったと話す。

 リビア赤新月社は、海で遭難事故が起こった場合、手順を踏んで対応にあたる。まず、前線のチームが通報を受け、別のチームが情報の検証を行う。その後、遺体を収容するチームが現場に送られ、そして遺体は法医学者の元へ送られる。それぞれの遺体が番号で登録された後、ようやくビル・オスタ・ミラドの墓地に埋葬される。

 イマドさんの弟の場合、遺体はタトゥー(入れ墨)を手掛かりに赤新月社が身元を確認した。しかし、法医学者が報告書の中でタトゥーのことに触れなかったために問題が生じた。このことについてイマドさんは「遺体は私の弟のものであることが確かなのに、当局はDNA検査をやろうとしない」と強く訴えた。

 そして「弟はきょうだいの末っ子。ここに置き去りにはしない。彼を連れて帰るまでは、ここを離れない」とAFPにその決意を語った。(c)AFP/Mohamad Ali Harissi