■複雑な言葉は当てにならない?

 トランプ氏の「シンプルな言葉」について、米ハーバード大学(Harvard University)ケネディ行政大学院(Kennedy School of Government、ケネディスクール)のマシュー・バウム(Matthew Baum)教授(コミュニケーション学)は「弁論の平易さを正直さに結びつける人々が、一部に存在する」と指摘する。同教授は、「これらの人々は、複雑で巧妙な話し方から、人をだましているという印象を過剰に受ける」傾向があると話す。

 では、トランプ氏のライバルである共和党の他の候補者たちは、語彙(ごい)に関してどの程度の水準に達しているのだろうか。

 最近の大統領予備選挙討論会で、トランプ氏以外の候補が行った発言を理解するために必要な能力を持つと推定される年齢は、上はテッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員と元神経外科医ベン・カーソン(Ben Carson)氏の15歳から、下はランド・ポール(Rand Paul)上院議員の11歳までとなった。

 他の候補者の発言に、4音節以上の単語が含まれる割合は、平均で14%だった。これは、トランプ氏の約2倍に相当する。

 発言に「複雑な」単語が使われた割合では、クルーズ上院議員が全体の24%、元フロリダ(Florida)州知事のジェブ・ブッシュ(Jeb Bush)氏は15%だった。

 この傾向についてローラー教授は、「他の候補者たちは十分に下調べをしてから討論会に臨んでおり、彼らの受け答えは原稿が用意されているかのようだ」と説明。一方で、「トランプ氏は、思ったことを何でも口に出す。だが彼はわざとそうしており、自分がしていることを理解していると、私は考えている」と付け加えた。

 さらに「中にはトランプ氏が知識を全く持っていない分野の話題もあるが、聴衆は気に掛けていないようだ」とも述べている。(c)AFP/Léo MOUREN