【12月23日 AFP】トルコの海岸に遺体が打ち上げられ、現在の難民危機の象徴となったアイラン・クルディ(Aylan Kurdi)君(当時3)の父親が、クリスマスにあたりメッセージを出し、紛争から逃れようとするシリア人に門戸を開くよう世界に訴えた。

 メッセージはクリスマス当日に英公共放送のチャンネル4(Channel 4)で放映される。この問題をめぐっては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、今年に入って欧州に流入した移民や難民が100万人を超えたと発表したばかり。うち97万人以上は地中海(Mediterranean Sea)を渡る危険なルートを使っていた。

 アイラン君は9月、シリアの内戦を逃れてトルコに避難した一家が、ゴムボートでギリシャに渡ろうとした際に船が転覆して亡くなった。トルコの海岸にうつぶせに横たわるアイラン君の写真は世界に衝撃を与え、難民危機への効果的対応を欧州諸国に急がせる大きなきっかけになった。

 チャンネル4が発表した書き起こしによると、父親のアブドラ・クルディ(Abdullah Kurdi)さんは動画メッセージでこう述べている。「私が伝えたいのは、世界全体がシリア人に門戸を開いてほしい、ということです。目の前で門戸を閉ざされることはとてもつらいです。門戸が開かれれば、その人はもう、屈辱を受けているとは感じません」。

 事故ではアイラン君の母親のリアナ(Rihana Kurdi)さんと4歳のガレブ(Ghaleb Kurdi)君も死亡し、その数日後に故郷のシリア・アインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、Kobane)に埋葬された。アインアルアラブでは昨年、イスラム過激派とクルド人部隊の間で数か月にわたり戦闘が続いた。アブドラさんは一家とほかの3人ほどのシリア人と共に町から避難した。

 現在はイラクのクルド人自治区の中心都市アルビル(Arbil)で暮らすアブドラさんは「(クリスマスという)1年のこの時期に、どうか皆さん、平和と安全を求めている父や母、そして子供たちが感じている痛みについて想像してみてください。私たちが求めているのは、皆さんのほんの少しの思いやりなのです」と呼び掛けた。(c)AFP