■批判もあるが、実践すれば「本当の意味で自立していると感じる」

 一方、欧米にも多くの支持者がいるバンティング・ダイエットに対しては、批判の声も根強い。長期的な減量にはつながらない上、栄養バランスが悪く肉を摂取し過ぎるために健康を害しかねない危険なダイエット法だ、といった意見だ。

 内分泌学者で肥満の専門家でもあるテス・ファンデルメルベ(Tess van der Merwe)教授は、高脂肪ダイエットは糖尿病、心臓疾患、肝硬変を引き起こす恐れがあり、がんとの関連も指摘されていると語る。

 サンプソンさんとノークス教授は今年、ケープタウンにあるジムチェーンと提携して会費無料で気軽に入れるバンティング・ダイエットグループを結成し、40人の減量希望者を募集。メンバーは週2回ジムに集まったり、ソーシャルメディア上で情報交換したりしながら、一緒にダイエットに励んでいく。

 8週間後、多くの人が減量に成功。中には血圧や糖尿病の薬が不要になったと喜ぶ人もいたが、必ずしも医師の許可は得ていなかった。

 サンプソンさんとノークス教授はこれを、ケープタウンで最も貧しい犯罪多発地区を含む他の黒人居住区にも導入していこうと計画している。

 世界保健機関(WHO)によれば、南アフリカはサハラ砂漠(Sahara Desert)以南の国で最も肥満率が高い。国民の4人に1人が肥満で、貧困層の黒人女性の肥満率が最も高くなっている。

「バンティング・ダイエットはそのような女性たちの心をつかんでいる」とサンプソンさんは言う。「私たちはこれを、南アフリカ全土に広げていきたい」

 ノークス教授は批判的な人々に対し、食習慣に起因する病気が南アフリカの貧困層にどれほどまん延しているか理解していないと反論している。

「(反対派は)実際に何が起きているのか自らコミュニティーに入って自分の目で見てはいないし、糖尿病患者の脚を病院で切断しているのも彼らではない。(真の)問題は糖尿病で…それに比べれば心臓病は小さな問題だ」とノークス教授は言う。

 さらにノークス教授は「(糖尿病の)女性たちがこのダイエットを始めれば…健康になり始める」「特に重視すべきなのは、彼女たちの気分が良くなっているということだ。人生で初めて自分の生活を自分自身で管理しているという感覚。それによって彼女たちは本当の意味で自立していると感じる」と語った。(c)AFP/Susan NJANJI