■技術を集約、さらなる発展へ

 同社はこれまでの約10年間、時計製作技術に対する信頼性を高めることを目的に複数の買収を重ねてきた。

 2006年に有名なスイスの時計ムーブメント(駆動装置)メーカー、ヴォシェ・マニュファクチュール・フルリエ(Vaucher Manufacture Fleurier)社の株式を25%取得し、2012年には時計の文字盤のデザインと製造を行うNateberを、翌13年には高級な時計ケースを専門とするジョセフ・エラール(Joseph Erard)を買収した。

「こうした技術を集約し消化吸収していくことが、われわれの第一歩だ」と、ドルデ氏は語る。

 同氏の経歴も、エルメスが見据える方向性を示唆している。

 前任のペラモン氏が、世界最大手の高級ブランドグループ、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)傘下のスイス高級時計ブランド「タグ・ホイヤー(TAG Heuer)」で手腕をふるうなど時計業界で経歴を積んできたのに対し、ドルデ氏は1995年に「エルメス」に入社した後、主に取り扱ってきたのはテキスタイルと高級レザーで、時計部門との接点はほとんどなかった。

 業界団体スイス時計協会(FHS)の統計によると、スイス時計の輸出は今年10月、12.3%減少。小売業者はすでに過剰な在庫を抱えており、ホリデーシーズンを前にしても商品の補充には消極的だという。

 こうしたなか、ドルデ氏は、自社時計の「売り場」をより限定する方針を示し、「エルメス」直営のブティック網を優先させる考えがあることを強調。「不況下でも力強い回復力あることが証明されているのは、こうした店舗網だ」と説明した。(c)AFP/Nathalie OLOF-ORS