【12月14日 AFP】アイルランドで、クリスマスツリー用に育てたモミの木の盗難多発に業を煮やした栽培農家が、ツリーを確実に顧客の元へ届けるべく警察と協力してスマートフォン(多機能携帯電話)やヘリコプターの巡回による対策を導入し、成果をあげている。

■警察に助けを求めた栽培農家

 首都ダブリン(Dublin)の南、ウィックロー(Wicklow)州の山地のツリー栽培者らが危機に直面したのは4年前。1年間に最大で2000本のモミの木が盗まれ、損失額は最大10万ユーロ(約1300万円)に上った。

 州内の小さな町ニュータウンマウントケネディ(Newtownmountkennedy)でモミの木を栽培するクリスティ・カバナ(Christy Kavanagh)さんは「栽培者の一人が(ツリー強盗に)縛りあげられ拳銃を突きつけられた。それで栽培農家の数人で、地元の警察に何とかしてほしいと頼みにいった」と話した。

 警察と栽培者との話し合いを機に毎年、アイルランド警察の主導でクリスマスツリー泥棒撲滅を目的とする「ハードル作戦(Operation Hurdle)」が行われるようになった。

 警察側は栽培者の援護策として、警察官による巡回や検問所の増加、赤外線システムを搭載したヘリコプターの導入などで森林農地の治安対策を強化。ウィックロー警察のポール・ホーガン(Paul Hogan)警視はAFPに「ツリーの売買は現金取引が基本。いったん栽培地からモミの木が取り去られたら、追跡して取り戻すのは非常に難しい」と語った。

■1本のツリーが育つのに14年

 同様に栽培農家側も、それぞれ盗難対策に乗り出している。

 カバナさんの農場では常時、ノーブルモミを中心に10万本を栽培している。1本40~70ユーロ(約5300~9300円)で販売しているが、モミの木が育って収穫できるまでには最大14年かかるという。

 こうして手塩にかけて育てたツリーを泥棒から守るため、カバナさんは防犯カメラや高さのあるフェンス、それにソーラー式動体検知カメラを設置して、モミの木栽培地で不審な動きを感知するとスマートフォンに映像が送られるようにした。

「14年間かけて育てたツリーを盗まれ、それまでの努力と出費が全て無駄になってしまうなんて、決して気分のいいことではない」(カバナさん)

 警察の「ハードル作戦」効果もあり、ホーガン警視によると今年のツリー泥棒発生件数は「数件程度」に減少。アイルランドのクリスマスツリー栽培者協会のダーモット・ペイジ(Dermot Page)会長も、「今年に入ってから、目立ったツリー泥棒の話は一度も聞いていない。こうしたあらゆる対策のおかげで、ずっと泥棒が寄り付かないと期待している」と語っている。(c)AFP/Conor BARRINS