■東洋と西洋医学の融合に向けて

 中医学で用いる主な医薬品の多くは、植物を由来とするものだ。しかし、長年にわたる屠氏の伝統中国医療研究でも、クソニンジンの他には薬剤を発見できていない。それでも一部の研究者らは、薬学効果をもつ成分を伝統中国医学から見つけようとしている。

 英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)中国医学研究所(Chinese Medicine Laboratory)のタイピン・ファン(Tai-Ping Fan)所長は、「民族薬理学の研究には意義がある」と話す。

「人類、そして科学が誕生してから、医学はずっと進化してきた」とファン氏。「証拠を得る必要はあるが、今は科学のおかげで、東洋と西洋の融合のあり方について議論する可能性が生まれた」

 かつては中医学に用いられていたが現在は絶滅危惧種として採取が禁じられているサイの角についても、「全てを廃棄せずに、含まれる成分を調べてみることは非常に意義があると思う」とファン氏は語る。「これまでに押収されたものも、研究室に送ってもらえば分析や合成ができる」

 中国の伝統中国医学は巨大産業だ。国営・新華社(Xinhua)通信によれば、2013年の市場規模は910億ドル(約11兆2000億円)超で、国内医療業界総生産高の3分の1を占めていた。

 国内医療機関の大半が西洋医学を採用するなか、政府は近年、伝統中国医学業界への助成と支援を拡大。今年5月には医療に関する指針のなかで、全ての県と直轄市に対し中医学専門医院を2020年までに開設する努力を求めている。(c)AFP/Ludovic EHRET、Rebecca DAVIS