【12月2日 AFP】「鉄の女」と呼ばれた故マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)元英首相の衣服や手紙、本、家具、ジュエリーなどゆかりの品350点を、競売大手クリスティーズ(Christie's)が今月、ロンドン(London)で競売にかける。

 ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)へ寄付を申し出たところ、断られたために売り出されることになったという品々には、サッチャー氏が愛用していた有名なハンドバッグの一部も含まれる。

 最高値での落札が見込まれているのは、推定12万~18万ポンド(約2230万~3340万円)とされるエメラルドとダイヤモンドがあしらわれた「ショーメ(Chaumet)」のネックレス。売り上げはサッチャー氏の2人の子どもと孫らで分配されることになっている。

 オークション開催に先立って今週配布されたカタログには、サッチャー氏のファッションにまつわる多数のエピソードが掲載されている。

 個人秘書を務めていたチャールズ・パウエル(Charles Powell)さんは、サッチャー氏が1984年2月に旧ソ連の指導者ユーリ・アンドロポフ(Yury Andropov)氏の葬儀に参列した際、現地で毛皮のコートとブーツを借りたことにまつわるエピソードを明かした。

「サッチャー首相のすぐ後ろには、ロンドン警視庁特捜部のボディーガードが控えていた。彼のポケットは膨れ上がっており、高性能の武器が潜んでいるに違いないと、ソ連側の警備担当者らは思ったことだろう。そして、クレムリン(露大統領府)内に移動してサッチャー氏がブーツを脱ぐと、ボディーガードがポケットに手を伸ばした。そこから引っ張り出したのは、ハイヒールだった」

 また、サッチャー氏個人の補佐役を35年間務めたシンシア・クロフォード(Cindy Crawford)さんは、元首相の「ワードローブダイアリー」をつけ、同じ服を2日続けて着ることのないよう気を付けていたという。「ズボンは概して嫌いで、パンツスーツも2~3着は買ってあったはずだが、結局一度も着なかった。ズボンをはいたのは、鉱山を視察した時、1回きりだった」

 裁縫師の母親と食料雑貨商を営む父親の下で育ったサッチャー氏は、ボタンを再利用していたともクロフォードさんはいう。「ボタンは捨てないで、一つの服からまた別の服へと付け替えていた。とても高価なものもたくさんあった」

 オークションは15日に開催される。また350点中200点については、インターネット限定で3日から2週間出品される。落札総額は50万ポンド(約9300万円)に上ると予想されている。(c)AFP