【12月1日 AFP】アフガニスタンの首都カブール(Kabul)で昨年、運転を始めて以来、ロクサール・アザメーさん(23)は軽蔑や嘲笑、さらには嫌がらせでわざと「事故」を起こして彼女の命を危険にさらそうとする男性たちの脅威に耐えてきた。だが彼女は負けないだろう。

 ジャーナリストの彼女は毎朝、仕事に行くためにタクシーを待っていても運転手たちが止まってくれないといういら立ちから、自分で運転を覚えることにした。しかし、自分の車を買っても、男性優位の超保守的なアフガニスタン社会の非難から、身を守ることができなかった。「多くの男性にとって、女性が車を運転するのを見るのは目新しいことで、嫌がらせをしてくる。嫌がらせの方法の一つが、事故を起こすこと」なのだという。

 昔からずっとこうだったわけではない。1990年代までは、アフガニスタンの女性たちは少なくとも大都市では普通に運転していた。バスの運転手をしていた女性もいたほどだ。だが92年に共産党政権が崩壊し、内戦が始まると、女性の運転は徐々に見られなくなった。そして96年にイスラム原理主義勢力タリバン(Taliban)が権力の座に就くと、女性は運転を禁止されただけでなく、ブルカを着用せずに、また男性の同伴者なしに外出することまで禁じられた。その状態は、米軍による2001年の侵攻でタリバン政権が倒れ、米政府が後ろ盾となった政権が樹立されるまで続いた。

 タリバン政権崩壊後、アフガニスタンの憲法に男女平等が記され、多くの女性たちが学校や大学で学んだり、家の外で働いたりできるようになった。しかし、それから14年たった今も、女性の運転は物議を醸し、道徳に反するとさえ思われている。

 イスラム教自体は女性に運転を禁じていないが、法律や文化規範によって、女性の運転を全面禁止しているサウジアラビアから、女性ドライバーが一般的に見られるイランやパキスタンまで、同じイスラム世界でも各国で事情は異なる。そしてアフガニスタンでは、女性の運転はイスラムの価値観を否定する、欧米の価値観の押しつけだとみなされていると、ある男性は説明した。女性の運転は不道徳に通じるという捉え方は、アフガニスタンでは珍しくないという。

 だがカブールのような大都市では、女性たちがそうした社会を変革しようとしている。運転する女性は一定の割合で着実に増加している。カブールの交通当局によると、タリバン政権崩壊直後、同市で自動車学校に入学を申し込む女性は毎年50人程度だったが、最近は毎年最大1000人の女性が申し込んでいる。

 しかし、タリバンがここ数か月、また勢力を盛り返していることで、国連(UN)職員や活動家たちは、外国部隊がアフガニスタンから去ってしまえば、せっかく女性たちがつかんだわずかな自由がまた侵害されてしまうのではないかと懸念している。

 北部の都市クンドゥズ(Kunduz)で最近タリバンに一時拘束され、逃げ出した女性の権利活動家の証言によれば、女性を組織的に標的にしている暗殺部隊があるという。タリバンが復権すれば、どれほど恐ろしいことが起きるかを暗示しているといえよう。

 それでも女性たちは負けていない。今、ハンドルを握っているロクサールさんのような女性の後に他の女性たちが続き、運転する女性たちの輪は広がっている。「昨日、友達から電話が来て、事務所に寄ってと言われたの。車を買ったので、街を乗せてまわってあげるからって」(c)AFP/Usman SHARIFI