【12月1日 AFP】2016年の米大統領選挙に向けた民主・共和両党の候補指名争いが本格化する中、二の次にされているのが「事実」だ。

 2001年の米同時多発テロが起きた際、アラブ系住民が歓声を上げていたと主張した共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の先月の発言は、候補者たちによる虚言のほんの一例だ。事実確認を行う「ファクトチェッカー」たちによると、事実を歪曲(わいきょく)しているのは、トランプ氏だけではない。

 共和党の候補者では、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員が、溶接工は哲学者よりも多く稼いでいると発言。また、元神経外科医のベン・カーソン(Ben Carson)氏は、米国の独立宣言の署名者に公選職の経験があった人はいなかったと発言した。

 また、コンピューター大手ヒューレット・パッカード(HP)の元最高経営責任者(CEO)カーリー・フィオリーナ(Carly Fiorina)氏は、米国が25万人のシリア難民を受け入れる準備をしているという誤った主張を展開した他、女性に医療を提供するNPO「プランド・ペアレントフッド(Planned Parenthood)」が「体の部位を得るために赤ん坊たちを惨殺している」ことを示す証拠動画があると主張したが、この動画の所在は明らかになっていない。

 民主党の候補者らもまた、事実をねじ曲げる発言をしている。ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官は、在任当時に私用サーバーを通じた電子メールの使用を国務省から「許可されていた」と発言。バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は、「気候変動はテロ増加と直接関連している」と断言し、証拠を誇張した。

 ファクトチェッカーによって誤りが暴かれているこうした主張は、すでに政治の一部と化しているが、今回の大統領選では候補者による扇動的な発言が特に目立つ。中でもとびぬけているのが、トランプ氏だ。

 トランプ氏は今年、米国の実際の失業率は最高で42%だと発言。最近では、白人の殺人被害者の81%が黒人に殺害されたことを示すグラフをツイートした。だが、政治家らの発言の正確性を評価するウェブサイト「ポリティファクト(PolitiFact)」によると、司法省による正確な数字は15%だという。

 米テレビ局FOXニュース(Fox News)の番組でこの誤りを指摘されたトランプ氏は、「ツイートしたのは私ではない。専門家とされる人(の投稿)をリツイートしただけ」と弁解した。