■自説に固執する政治家

 政治家は得てして、事実を突きつけられてもなお、自説に固執するものだ。

 トランプ氏は、米同時多発テロで多くのアラブ系住民が歓声を上げたと論じているが、この噂は、警察やファクトチェッカー、そして米メディアによって事実ではなかったことが、テロ発生から数日の間に確認されている。

 だが米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)から誤りを指摘されたトランプ氏は、「謝罪を求める!大勢の人が、私は正しいとツイートしている!」と反撃に出さえした。

 また、先月29日に出演した米NBCニュースの番組では「14年前だが、テレビで見た。私も、大勢の人々もあの映像を見た」と主張。「トランプ・オーガナイゼイション(Trump Organization)には、『私たちも見た。路上で踊っていた』と言う電話が数百件も寄せられている」と語り、発言の撤回を拒否した。

 政治家らの頑固さには、ファクトチェッカーも驚きを隠せずにいる。ポリティファクトの創設者であるデューク大学(Duke University)のビル・アデア(Bill Adair)教授(ジャーナリズム)は、「明らかに事実に反するのに、それを認めない。どうしたらそんなことが言えるのか見当もつかないことが確かにあった」と語る。

■独り歩きする誤報

 米ボストンカレッジ(Boston College)の政治学者、エミリー・ソーソン(Emily Thorson)氏によると、「誤った情報」はたとえすぐに訂正されても影響が長く続くことが多い。例えば、あるレストランで虫が出たという話を聞くと、それが間違った情報だと分かった後も、そのレストランに対して悪い印象を持ち続けてしまうことがある。「最初の印象を取り消すのは難しい。誤った情報はたちまち伝わり、繰り返される」と、同氏はAFPに説明した。

 また、専門家らによれば、候補者の確固たる支持者は、ファクトチェッカーが証拠を示してもほとんど影響されないのだという。米ダートマス大学(Dartmouth College)の政治学者、ブレンダン・ナイハン(Brendan Nyhan)氏は、事実確認について、「議論の的となっている政治問題の場合、効果がなくむしろ逆効果であることが多い」と述べ、「人間は元々持っていた考えや姿勢に反する情報には抵抗する傾向がある」と説明した。(c)AFP/Rob Lever