【11月21日 AFP】フランス・パリ(Paris)の同時テロを受け、欧州連合(EU)は20日、シェンゲン協定(Schengen Agreement)に基づいてパスポートなしで移動できるシェンゲン圏の国境検査を厳格化し、同圏の改革案を年内にまとめることで合意した。

 ベルナール・カズヌーブ(Bernard Cazeneuve)仏内相は、より深い改革案がまとまるまでの間、シェンゲン圏域外との国境検査を速やかに厳格化することがEU緊急内相会合で合意されたと述べた。

 同内相は記者会見で「改正は絶対必要なもの」と指摘し、「域外との全ての国境で、移動の自由を享受する人々を含む全ての旅行者に体系的かつ義務的な検査を実施できるようにするため、(EUの政策立案・行政執行機関)欧州委員会は今年末までにシェンゲン協定の改革案を提示する」と述べた。

 EU内でパスポートを使わず移動できるシェンゲン圏には現在26か国が含まれている。これまで域外から来る非EU加盟国民に対してのみ行われていたデータベースでのテロや犯罪歴の照合が、今後はEU加盟国民に対しても実施される。

 130人が死亡したパリの事件では、主犯アブデルハミド・アバウド(Abdelhamid Abaaoud)容疑者ら2容疑者が、シリアから帰国した際に検査を逃れていた疑いがあり、シェンゲン協定への疑問が呈されていた。

 記録的な難民・移民の流入によってドイツなどのEU加盟国が一時的に国境検査を再導入した中で持ち上がった今回の計画は、EUの統合と自由の柱とされているシェンゲン協定にとってさらなる打撃となる。

 ルクセンブルクの国境の町の名を取って命名されたシェンゲン圏は1995年に誕生した。現在はEU加盟国28か国中22か国と、非加盟国のノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタインが参加している。英国、アイルランド、クロアチア、ブルガリア、ルーマニア、キプロスはシェンゲン圏に含まれていない。(c)AFP/Lachlan Carmichael