■あらゆる場所に人質が

「すべてのドアの反対側に人質がいたが、本物(の人質)かどうか、その都度、確認しなければならなかった」と隊員はいう。サフラン医師は、1階に爆発物がないか、襲撃犯たちがいないか、隊員らが迅速にくまなく調べたが、どちらも見つからなかったと述べた。

 その後、一部の隊員が2階のバルコニー席へ向かった。仏国家警察特別介入部隊(RAID)も、外の通りやメーンホールの周囲に配備された。

 隊員によれば「つり天井や長椅子の下など、あらゆる物の影に人質がいた。武装している者がいないか、爆発物はないか、一つ一つ調べる必要があった」

 午後11時15分、「あるドアにたどり着いたとき、その裏からテロリストが叫んでいるのが聞こえた。襲撃犯の2人がおり、自爆ベルトを着けていて、それを爆発させると脅迫していた。我々が後退しなければ、人質の首を切り落とすとも脅してきた。2人はシリアについて話していた」

 警察の交渉担当官が電話で襲撃犯と話そうと試みたが、失敗に終わった。午前0時18分、突撃開始の命令が下された。

「ドアを開けた先は、15メートルほどの廊下だった」。人質は警官隊と襲撃犯の間にいて、廊下の反対側から襲撃犯が発砲してきた。「人質たちは床に伏せて身を縮めていた。我々はテロリストから銃撃されながらも前進した。人質がいるので撃ち返すことはできなかった。とにかく盾を手に進んだ」

「AK47(カラシニコフ自動小銃)からの発砲を盾で受けながら、人間の鎖を作って、人質を後ろに逃した。テロリストと我々の間に人質がいなくなると、我々は攻撃の第2段階に入った」

「盾が壊れた。影が見え、我々が発砲すると、その影は崩れ落ち、爆発した。どうなったのか分からないが、結果として、その2人の襲撃犯は自爆していた」

 跳ね返った銃弾で警官1人が負傷した。3人の襲撃犯の死亡を確認し、現場の安全を確保するまでに、さらに1時間を要した。

「彼らは、裏側に15人前後の人質がいたドアの前で自爆した。人質たちは、我々が警察だと言っても信じず、17番(警察への緊急通報番号)に電話して確認をとっていた」(c)AFP/Katell PRIGENT