【11月18日 AFP】アルコール依存症の治療薬を用いて、休眠中のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を再活性化できるとの研究結果が17日、発表された。これにより、ヒト免疫細胞に潜伏しているHIVを他の薬剤で殺傷することができるようになる可能性があるという。

 英医学誌ランセット(Lancet)に発表された研究論文によると、「ジスルフィラム(Disulfiram)」と呼ばれるこの治療薬は、患者への副作用を一切起こさずに、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)を誘発するHIVを「引きずり出す」という。

 エイズの治療を受けている患者の体内では、HIVは特定の細胞の内部に避難して潜伏することができ、治療を中断すると活動を再開する。このウイルスの潜伏は、治療法開発における最大の難関の一つになっている。

 HIVを「休眠から覚醒」させて破壊する方法は、患者からHIVを駆除するための有望な治療戦略の一つとされている。だが、HIVを休眠状態から目覚めさせることができる他の薬剤は、人間にとって有害なものだった。

 豪メルボルン大学(University of Melbourne)のシャロン・ルウィン(Sharon Lewin)教授が主導した臨床試験では、抗レトロウイルス薬療法(ART)を受けている患者30人に、ジスルフィラムを3日間にわたり徐々に用量を増やして投与した。

 結果、最高用量でも副作用を起こすことなく、休眠状態のHIVが活性化されている証拠が得られた。

 ルウィン教授は声明を発表し、「ジスルフィラムは有毒ではなく、安全に使用でき、われわれが必要とする『ゲームチェンジャー』になれる可能性が十分にあることを、今回の試験は明確に証明している」と指摘した。

 次の段階は、ジスルフィラムの覚醒作用をウイルス殺傷薬と組み合わせて試験することになる。

 論文の主執筆者で、豪アルフレッド病院(Alfred Hospital)感染症科で臨床研究を統括するジュリアン・エリオット(Julian Elliott)氏は「ウイルスを覚醒させることは、HIVを排除するための第1段階にすぎない」と話し、「今後は、HIV感染細胞を除去する方法を考案する必要がある」と続けた。

 HIV関連の累計死者数は、世界で約3400万人に上っている。2014年末の時点で、HIV感染の推定患者数は同3690万人とされていた。(c)AFP