【11月12日 AFP】大型のゴキブリは強力な咬合(こうごう)力を持っているとの研究結果が11日、発表された。顎がかみ砕く力は人間の5倍、ゴキブリ自身の体重の50倍に相当するという。

 ただ、ゴキブリがいつも、そのように激しい力でかみついているわけではない。

 米科学誌「プロスワン(PLoS ONE)」に掲載された研究論文によると、ゴキブリは木材などの硬い物質をかみ砕く必要がある場合に限り、大きな負荷のかかる反復作業に必要とされる力の引き上げを行うために、顎にある特定の遅筋(ちきん)繊維を稼働させるという。

 論文主執筆者の英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)動物学部のトム・ワイマン(Tom Weihmann)氏は「どこにでもいる昆虫の咬合力を測定した研究は今回が初めてであり、ワモンゴキブリ(学名:Periplaneta americana)が体重の約50倍の咬合力を発揮できることが、今回の研究で分かった」と話す。

「これは、人間が顎を使って発揮できる力の約5倍に相当する」

 ワイマン氏によると、研究チームがワモンゴキブリの咬合の解明を目指した理由は、多くの生態系で昆虫が重要な役割を担っており、研究成果が「生物にヒントを得た技術」を実現させる可能性があるからだという。

■ゴキブリヒントに微小モーター開発される日も?

 研究チームは、実験用のゴキブリによる300回のかみつき行動を分析した。動作が素早くて弱いものから、持続時間が長くて強力なものまでのさまざまな咬合がみられた。

「短時間の弱い咬合は、比較的速い速度で収縮する速筋繊維によって発生した一方、持続時間が長く強力な咬合は、最大力に達するのに時間を要する別の筋繊維によって駆動される」とワイマン氏は説明する。

「これらの遅筋繊維は、持続的なかみつき行動中に最大0.5ニュートンの圧力をかけることを可能にするための力の急増を下顎骨にもたらす」

 ゴキブリの口には、水平に並んだ刃のような一対の顎があり、ゴキブリはこの顎を使って食物を細かく刻んだり、穴を掘ったり、ものを運んだり、自分の身を守ったり、子に餌を与えたりする。

 昆虫界では、この種の顎はとりわけ特異的というわけではないが、必要な筋肉の断面積、すなわち頭部の体積を最小限に抑えた上で、筋力を非常に効率的に生成できるようにするゴキブリの遅筋繊維の働きに、研究チームは驚嘆したとワイマン氏は話した。

 サイズは小さいが非常に大きな力を発揮できる微小モーターやマイクロプローブなどを設計するために、技術者らがゴキブリからヒントを得る日が来るかもしれない。(c)AFP