■社会階層に合わせ多様な提供

 金第1書記にとって「レジャー」事業は諸外国に繁栄の印象を与えると同時に、エリート層の需要に応え新たに可処分所得を持つようになった層の願望を満たすという、二つの目的にかなうものだ。さらに、馬息嶺スキーリゾート(Masik Pass Ski Resort)のような最高級クラスの施設に観光客が増えれば、のどから手が出るほど欲しい外貨を獲得できるという期待もある。

 庶民的なレジャー施設としては、3年前に開業した平壌郊外の人民公園(Folk Park)がある。ここには5世紀の仏塔の実物大レプリカや、平壌のランドマークである建造物の縮小版レプリカが設置されている。入園料は安く、1日の平均来場者数は5000人ほど。多くの家族連れやカップルが園内を見て回り、展示物の前で写真を撮り合っている。

 一方、綾羅人民遊園地(Rungna People's Pleasure Ground)内に12年に完成した「イルカ館」はもっと高級市場向けの施設だ。海水は南浦(Nampo)港からパイプラインで引いている。人民公園が国民の教育を目的としているのに対し、イルカショーは完全に娯楽を目的としたものだ。だが、イルカ館は完全に政治的なプロジェクトで、調教師は一流大卒のエリートから選ばれ、調教法を学ぶために中国へ派遣される。

 イルカ館の建設費、運営費が巨額であることは明白で、貧困が著しい北朝鮮で優先されるべき課題が後回しにされている実態がここでも問題視される。

 イルカ館の来場者サービスを担当する責任者は、1日当たりの運営費については明言を避けたものの「海水は全長70キロのパイプラインで引かれ、飼育するイルカ10頭が食べる魚は1日10キロだ。これで想像できるだろう」と話した。(c)AFP/Giles HEWITT