■循環能力は以前の6%にまで

 論文主執筆者の英オックスフォード大学(University of Oxford)の生態学者、クリストファー・ダウティー(Christopher Doughty)氏は「これまで、動物は栄養循環で重要な役割を果たしてはいないと考えられていた」と話す。だが、研究チームによると、動物は、そのままでは生命が育たないと思われる場所を栄養豊富な状態にするふん便をあちこちに移動させる、極めて重要な「配送ポンプ」としての役割を担っているという。ただし、その能力は以前の6%にまで低下していると論文は述べる。

 大型動物に関する最近の一連の研究結果と、陸地と海洋の間をどの程度の栄養分が移動するか、そしてこれが動物の個体数減少とともにどのように変化したかを推定するための数理モデルを組み合わせたものが、今回の研究の基礎になっている。

 研究チームの推定によると、例えば営利目的の狩猟が始まる以前の時代には、クジラなどの海洋哺乳類は年間総重量約3億4000万キロのリンを、深海から海面まで移動させていたとされる。一方、現在の年間移動量は約7500万キロで、これは以前の23%にすぎない。

 海鳥とサケでは、以前は年間1億3600万キロ以上のリンを陸地に移動させていた。しかし、現在の年間移動量は、生息地の減少と乱獲が主な原因で、以前の4%足らずとなっている。

 重要な肥料であるリンは、今後50年で供給が決定的に不足する恐れがあるため、大型動物保護の取り組みが、さらなる供給不足に陥るリンを海から陸に再循環させる一助となる可能性があると研究チームは述べている。(c)AFP