【10月20日 AFP】バブルガムピンクのハートマークにチュールスカート、水玉模様──悪びれる様子もないほどフェミニンな東京発の「カワイイ」ファッションは、欧米で爆発的に普及した。一方で、この「ガーリー」なスタイルを取り入れたハリウッドのセレブたちに対し、フェミニストたちは酷評を浴びせている。

「純粋」「無邪気」といった日本の伝統的な概念を、「ハローキティ(Hello Kitty)」などのキャラクターが体現する「ドール」的美意識とミックスした「カワイイ」ファッションの起源は、1970年代後半までさかのぼる。

 1990年代を通じて「カワイイ」ファッションは東南アジアに浸透していったが、欧米のファッション界ではなかなか受け入れられなかったどころか、「ぶりっ子っぽさ」が冷笑されることさえあった。しかしここへ来て、欧米でもケイティ・ペリー(Katy Perry)やレディー・ガガ(Lady Gaga)らのミュージシャンや女優たちが取り入れるなど、ファン層が広がっている。

 先週閉幕した「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO)」では、集まったセレブたちを前に、日本のデザイナーたちがキュートさが光る服を多数披露した。「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」はモデルたちに、フェザーのついたアンクルソックスとポンポンをあしらったスーツを着せた。型破りなブランドとして知られる「ドレスキャンプ(DRESSCAMP)」はタフタ素材のピンクのケープや、スパンコール付きのチュールのペチコートを披露した。

■「カワイイ」は「無力さ」の象徴か、自己表現か

  東京を拠点に活動するブロガーで、テレビ番組「カワイイ・インターナショナル(Kawaii International)」のホストを務めるミーシャ・ジャネット(Misha Janette)氏は、2011年の東日本大震災以降、楽しさを求める人々にカラフルなファッションが支持され「カワイイ・カルチャー」に新たな潮流が生まれていると話す。

 しかし、猫の耳がついたヘッドバンドやふわふわのスカート、いちごのケーキや漫画のキャラクターが描かれたトップスといった通常は子供向けのデザインを着る女性たちの姿に、欧米のフェミニストたちは怒りを感じている。英ガーディアン(Guardian)紙のコラムニスト、ハドリー・フリーマン(Hadley Freeman)氏は「子どもみたいに見えるようにするということは、女性から威厳を奪い、無力な、かばうべき存在にするということ。女性が子どものような恰好をすれば、そういった態度を助長する」と書いた。

 業界関係者はこうした懸念を一蹴する。「人形のような格好をしている女性が、人形のように扱われたいと思っているわけではない」とブロガーのジャネット氏はいう。それどころか、周囲に合わせることが価値とされる日本でまれな自己表現の窓を、ファッションは提供していると話す。

 バイリンガルファッション誌「ザ・リアリティ・ショー・マガジン (The Reality Show Magazine)の編集者、ティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy)氏も「ここ(東京)ではいつも、男性の気を引くためではなく、自分たちのために女性がオシャレをすることから、新しいスタイルが生まれる」という。

 ゴドイ氏は、若い女性をターゲットにした批判はフェミニズムの古びた見解だという。「極めて時代錯誤な物の見方だ。こうした少女たちのファッションは遊び心であり、自分が幸せになる服を着ているのだ。(どのサブカルチャーでもそうであるように)それで人々が不快に思うのは、伝統的な格好ではないからだ」(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY