【10月6日 AFP】気象現象「エルニーニョ(El Nino)」によって、東南アジアでのデング熱の流行が引き起こされる可能性があるとの研究結果が5日、発表された。

 エルニーニョ現象による海水温の上昇傾向に伴い、デング熱の患者数が増加することは、これまですでに分かっている。エルニーニョは、発生する年としない年がある。研究者らによると、すでに始まっている現在のエルニーニョは来年まで続くと予測されており、過去20年で最大規模の強さになる見通しだという。

 査読学術誌の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された論文の主執筆者、米ピッツバーグ公衆衛生大学院(University of Pittsburgh Graduate School of Public Health)のウィレム・ファン・パニュイ(Willem van Panhuis)助教(疫学)は「デング熱の大流行が突発的に発生し、医療システムに過度の負担がかかる」ことを指摘。また「温度上昇により、大規模なデング熱の流行が広い地域にわたって拡大するのに理想的な状況が形成される可能性があることが、今回の分析で分かった」と説明した。

 論文によると、研究チームは、東南アジア全域でのデング熱の月次調査報告書18年分を分析し、その結果、8か国で報告されたデング熱患者、合計350万人の間にみられる傾向が明らかになったという。

 直近の特に強いエルニーニョが発生した1997~98年には「デング熱の感染率が非常に高く、高温現象との完全な一致を示した。高温は、蚊の繁殖を加速させ、デング熱ウイルスをより効率的に拡散させた」と論文は説明している。

 エルニーニョは、太平洋東部で温度が上昇した海水を西へと移動させ、熱帯地方と亜熱帯地方での気温上昇を引き起こす。

 デング熱は、熱帯地方と亜熱帯地方で蚊媒介性ウイルスが引き起こす病気で、毎年4億人近くの感染患者が発生している。症状としては、発熱、激しい体の痛み、頭痛、吐き気、嘔吐、発疹などがある。一部の患者は死に至ることもある。

 予防ワクチンはなく、治療法もアセトアミノフェン以外に存在しない。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、世界のデング熱発生数は過去数十年間で大幅に増加しており、現在は世界人口の約半数に感染の恐れがあるという。(c)AFP