■今、まさに起きていることを世界に伝える手段

 このFIPCOMで賞をとったことを私は誇りに思うが、この写真以上のことを人々に見てほしいと願っている。シリアは爆撃や苦境の映像にとどまらない。人々が自由を求め、自分たちの国を築こうとしている場所である。時が経つにつれ、私はこの新しい職業を好きになってきた。だが写真は私にとって、単なる趣味ではない。シリアで今、まさに何が起きているのかを、世界に正確に伝える手段だ。もしも私や友人たちが、写真を撮ることをやめたら、政権はたる爆弾をもっとたくさんアレッポに落とし、誰もそれを知ることがないだろう。

 私は反体制派側が支配するアレッポに住み、働いている。だから今も、比較的自由に動くことができる。途切れ途切れではあるが、インターネットにもアクセスできる。2ドルでSIMカードを買い、発電機や車のバッテリーにつないだコンピューターをWiFiに接続することもできる。AMCでは、フェイスブック(Facebook)上に監視システムのようなものを作っている。国内のさまざまな場所にいる記者たちが、何か起きたらアラートを発してくれるのだ。だから、どこかでたる爆弾が爆発したと聞けば、皆でそこへ向かうことができる。

シリアの反体制側が支配する北部の都市アレッポ、内戦で破壊されたアンサリ地区(2014年11月24日撮影)。(c)AFP/BARAA AL-HALABI

 仕事のせいで、私たちは時に無感覚になることもある。それでも、耐え難い光景を見てシャッターを切れないときがいまだにある。例えば、5月に政府軍のたる爆弾がアレッポの市場を直撃し、70人以上が犠牲になったとき、私は写真を撮ることができなかった。目の前で起きた虐殺に耐えきれず、ただ地面に座り込み、泣いていた。

 しかし、友人やAMCの同僚たちが私を支え、写真を続けるよう励ましてくれた。だからまた働き始めることができた。

 時に写真家の私に敵意を向ける人々もいる。凄惨な攻撃があり、血まみれの人々の中から遺体を探し出そうというときに、写真家にうろうろされたくない人たちもいる。私たちがいたからそのような攻撃が起きたと、彼らは思っているからかもしれない。私たちの存在は、そうした人々や近隣の注目を集めてしまう。そのような敵意に直面したときは、私はできるだけ早く退散するようにしている。